mainC
□First love
1ページ/1ページ
『First Love』
初体験は中2の春だった。
「なあ…公平、」
「ん?」
「キス…したことあるか?」
「……なんで?」
「あんのか?」
「あるよ…一応、女いたし…」
ふーん、と面白くない顔をして俺を細目でジロリと見る。
「じゃあ…エッチは?」
「あ?」
「エッチはしたのかよ、その女と!」
「なんでお前にんなことまで言わなきゃねーんだよ!」
「………なんか、妬ける。」
「はあ?俺は男だぞ?」
明かにふて腐れた顔の京介、
一体なにを言いたいのかさっぱりと解らなかった。
妬ける…ってなんだよ。
「女とはもう別れたし…」
「でも、したんだろ…?」
「ああ…でも別に好きで付き合ってた訳じゃねえよ。相手は先輩だったし、告られてなんとなく断れなくて…って感じ。」
「ぷっ、ひでえな…お前。」
ようやく笑った京介の顔は安堵に包まれていた。
「公平、頼みがあるんだ」
「ん、なに?」
「俺の童貞…貰ってくれ、」
「…………は?」
京介は真っ赤な顔をして、視線を併せないよう俯いていた。
こいつ…本気だ。
「お前なぁ…、」
呆れたように返事を返すと、
顔を上げて真摯な眼差しで俺を見つめる。
「公平、」
「俺は男…だぜ…?」
「んな事、解ってるわ…!」
「……訳わかんねえ、」
「お前が…好き、なんだよな…」
「…は?」
今までそんなそぶりも見せなかったくせに…
「公平は俺の事…嫌いか?」
「えっ、あ、いやっ…えと…よく…わかんねえ、けど…一緒にいて楽しいし…、嫌いじゃないと思う…、」
「キス…してもいいか?」
「はあ…?いやっ…それは…」
京介の事は嫌いじゃない。
バカだけどケンカは強いし、
俺も憧れる部分は沢山ある。
一生、親友であり…相棒でいたいと思っていた。
ただ、
それ以上の関係になってしまうと…もう親友にも戻れない。
そんな気がしてならなかった。
「公平、」
「…悪りい、京介…」
「そっか、そうだよな…俺、男だしな…ははっ…気持ち…悪いよな…」
「違う…俺、そんな風に思ってない!ただ、友達に戻れなくなる気がして……怖い。」
「キスだけで終わる俺達かよ…」
京介の掌が顔を包んで、鼻で鼻をくすぐる。
「くすぐってえよ、京介…」
「マジで抱きてえ、」
「………試してみるか?」
「公平がよければ、」
「仕方ねえからな、」
京介の掌は俺の顔をそのまま包み、お互いの唇が初めて触れて俺達の新しい関係は始まった。
キスって好きなやつとすると、気持ちいいんだな…
唇が離れた瞬間、
なんだか可笑しくなって思わず吹き出した。
釣られて京介も何故か一緒に笑った。
そのあとに京介の童貞がどうなったのかは…
俺達だけの秘密。
「公平、可愛い…」
「…ッ、バカ。」
end