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□First love
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『First Love』



初体験は中2の春だった。




「なあ…公平、」

「ん?」

「キス…したことあるか?」

「……なんで?」

「あんのか?」

「あるよ…一応、女いたし…」


ふーん、と面白くない顔をして俺を細目でジロリと見る。


「じゃあ…エッチは?」

「あ?」

「エッチはしたのかよ、その女と!」

「なんでお前にんなことまで言わなきゃねーんだよ!」

「………なんか、妬ける。」

「はあ?俺は男だぞ?」


明かにふて腐れた顔の京介、
一体なにを言いたいのかさっぱりと解らなかった。

妬ける…ってなんだよ。


「女とはもう別れたし…」

「でも、したんだろ…?」

「ああ…でも別に好きで付き合ってた訳じゃねえよ。相手は先輩だったし、告られてなんとなく断れなくて…って感じ。」

「ぷっ、ひでえな…お前。」


ようやく笑った京介の顔は安堵に包まれていた。

「公平、頼みがあるんだ」

「ん、なに?」

「俺の童貞…貰ってくれ、」

「…………は?」


京介は真っ赤な顔をして、視線を併せないよう俯いていた。

こいつ…本気だ。


「お前なぁ…、」

呆れたように返事を返すと、
顔を上げて真摯な眼差しで俺を見つめる。


「公平、」

「俺は男…だぜ…?」

「んな事、解ってるわ…!」

「……訳わかんねえ、」

「お前が…好き、なんだよな…」

「…は?」


今までそんなそぶりも見せなかったくせに…

「公平は俺の事…嫌いか?」

「えっ、あ、いやっ…えと…よく…わかんねえ、けど…一緒にいて楽しいし…、嫌いじゃないと思う…、」

「キス…してもいいか?」

「はあ…?いやっ…それは…」


京介の事は嫌いじゃない。

バカだけどケンカは強いし、
俺も憧れる部分は沢山ある。

一生、親友であり…相棒でいたいと思っていた。

ただ、
それ以上の関係になってしまうと…もう親友にも戻れない。

そんな気がしてならなかった。


「公平、」

「…悪りい、京介…」

「そっか、そうだよな…俺、男だしな…ははっ…気持ち…悪いよな…」

「違う…俺、そんな風に思ってない!ただ、友達に戻れなくなる気がして……怖い。」

「キスだけで終わる俺達かよ…」


京介の掌が顔を包んで、鼻で鼻をくすぐる。

「くすぐってえよ、京介…」

「マジで抱きてえ、」

「………試してみるか?」

「公平がよければ、」

「仕方ねえからな、」


京介の掌は俺の顔をそのまま包み、お互いの唇が初めて触れて俺達の新しい関係は始まった。


キスって好きなやつとすると、気持ちいいんだな…

唇が離れた瞬間、
なんだか可笑しくなって思わず吹き出した。

釣られて京介も何故か一緒に笑った。


そのあとに京介の童貞がどうなったのかは…

俺達だけの秘密。





「公平、可愛い…」

「…ッ、バカ。」


end

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