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□人魚
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『人魚』
貴方が好きで好きで、
毎晩、涙で枕を濡らしました。
貴方はどうしたら俺に振り向いてくれますか?
俺が…年下だから?幼馴染みだから?まだ中学生だから?
「お、十希夫!今、学校の帰りか?」
「はい、岩城先輩…!」
「ははっ、軍司でいいよ。」
軍司さんの後ろに綺麗な顔をした鈴蘭の生徒。
「そういや、十希夫も来年は鈴蘭を目指すんだよな?」
「あっ、はい!岩…あ、軍司さんの右腕になれるように頑張ります!」
「期待してるからな!」
後ろにいる片方の眉毛がなくて、目の下に傷がある美人さんはクスクスと笑っていた。
「お、そだ!十希夫、こいつ…米崎。鈴蘭一年生でも、なかなかの実力者だ」
「はじめまして。」
「あっ、はじめまして…原田十希夫です!」
ペコリと頭を下げると、
軍司さんは米崎さんの腰に手を回して、「十希夫、受験頑張れよ!」と、笑顔で手をふり自宅へと入って行った。
「あ、ぐんっ…じ…さん…」
立ち尽くすしかなかった。
俺は悟った。
あの人は、
米崎さんは、
軍司さんの恋人なのだろう…と。
「……っ、」
アスファルトに涙の後を残して、わずかに離れる自宅へと帰宅して、涙腺が崩壊したかのように泣いた。
軍司さんの隣りにいるのは、
どうして俺じゃないの?
こんなに軍司さんの事を想っているのに。
俺がもう一年、早く生まれていたら?
お願い、
軍司さんを取らないで
軍司さんを返して
軍司さん、
俺だけのものになって…
あの人と、
キスをして
セックスをして
愛を語り合うんですか?
どうか、
その相手を俺にして下さい。
この声をくれてもいい
足をくれてもいい
腕をくれてもいい
貴方を見つめる瞳さえあれば…
貴方の声を聞ける耳さえあれば…
俺はもう貴方のもの。
貴方が全て。
***************
やがて、
入学を迎えた春。
「軍司さん、俺を軍司さんの右腕にしてください!」
「お、入学してきたな!十希夫!!」
「はい、もう…片時も離れませんから。」
貴方は俺のものになる運命。
俺と軍司さんの邪魔はさせない。
あの人と軍司さんが終わるまでのカウントダウン開始。
軍司さんは俺のもの。
安心して下さい軍司さん。
俺は決して、離れませんから。
いえ、
離しませんから…。
end