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□キスの合図
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『キスの合図』

セックスの時、アキラちゃんは必ず腕で自分の顔を隠す。

俺が腕を取り外そうとすると、本気で怒るんだ。



「っはぁ…あっ、あ…」

はぁ…アキラちゃん、今日も可愛い声で鳴くなぁ…

なんて、思ってても顔はやっぱり両腕で覆われていて見えない。

「アキラちゃん…いい加減に観念して、顔を見せてよー」

「やっ、やだっ…」

「挿入れてる時、キスが出来ないじゃん!」

「それでもダメっ…」


「なんでー!」

「はぁあっ…あっ、あっ、…」

これでもか!と腰を激しく打ち付けて、アキラちゃんの顔を見ようと試みる。

それでも、両腕はしっかりとガード。

むう…敵は手強い。


「アキラちゃん…キスしながらイキタイ…ダメ?」

腕の隙間からチラッと覗くアキラちゃんの視線。

「……わかった。ただし、イク時だけな」

「うん、わかった!」

再び、律動を繰返してキスのタイミングを伺う。

本当は感じている顔を見ながら、セックスしたいんだよ… アキラちゃん。

なのに、
なんでそんなに顔を見られる事を嫌がるの?


「明…も、イクッ…」

静かに解かれる両腕。

今だ…!と言わんばかりに両腕をガッチリとシーツに押さえつける。

「やっ…前川…み、みんなぁ…!あっ、ああっ…!」

「アキラちゃん…泣いてるの?」

アキラちゃんの目からは涙がボロボロと零れていた。

「だから…顔、見られんの嫌だったんだよ…ばか…恥ずかしいだろ…」

「どうして?こんなに可愛いのに…気持ちよくて泣いてるんだね?」

そう言うと、アキラちゃんは顔を真っ赤にして静かにうなづいた。

「じゃあ…本当にイクよ?」

「おせえんだよ…ばか…」

両腕を押さえつけて、俺は初めてアキラちゃんの感じている顔を見ながら吐精した。

泣きながら感じているの?
アキラちゃん…

泣くほどいいの?
アキラちゃん…


「大好きだよ、アキラちゃん…」

「だっ、だからなんだよっ…前川のバカ…!」

俺はクスクスと笑った。

そんな素直じゃないアキラちゃんが好き。

恥ずかしいからって、顔を隠していたアキラちゃんが好き。

全部、好き。


「前川…おめーなぁ…全部、声に出ててるぞ…」

「あはは!…じゃ、まあそういう事なんで!!」

「…ちっ」

「アキラちゃん…またエッチする時にさ、顔見せてよ…ね?」

「……やだ」


そう言いつつ、


それから
少しずつ顔を見せて、

俺を見つめながら感じてくれるアキラちゃんがいた。


両腕で顔を隠して、誰かを想っていたならそれはもう過去の事。

これからは、
俺だけを見つめていて。

たくさん、鳴いていいから。

たくさん、泣いていいから。

ね、アキラちゃん。

目が合えばホラ、キスの合図。


end

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