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□MYCHILDHOODFRIEND
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『MYCHILDHOODFRIEND』
朝、目が覚めると隣りに全裸の十希夫が寝ていた。
ふと視線を布団の中へ落とすと、自分も全裸になっていた。
部屋中を見渡すと、
無造作に脱ぎ捨てられた衣類や下着、
そこら中に散らばるティッシュの数々、
昨夜、浴びるほどに飲んだ焼酎の空ビン。
再び、十希夫に視線を向けると首筋や鎖骨にはキスマークの跡が沢山残されていた。
ちょっと‥待て‥これは‥俺が?
正直、夕べの事は何も覚えていなかった。
夕べは、
十希夫と焼酎を飲みながら楽しく語りあっていて‥お互い飲み過ぎてかなり泥酔して、テンションが上がっていた所までは覚えている。
泥酔した十希夫があまりに懐いてくるもんだから無性に可愛くみえて‥‥
みえて‥
て‥
「あ、」
十希夫を押し倒した。
十希夫は静かに目を閉じて、
「軍司さんがすきです」
確か、そう言った。
そこからの記憶は曖昧だ。
でもこのキスマークは、多分俺がつけたものに違いない。
俺‥十希夫を犯っちまったのか‥?
肝心の部分が思い出せなかった。
まさか、と思い布団を静かにめくるとシーツにはわずかな出血の跡。
紛れもなく十希夫を犯した証拠であった。
「‥ん、軍司さん?」
「あっ‥とっ、十希夫‥起きたのか!」
「‥はい‥すみません‥寝ちゃいました‥」
「ははっ、いいからまだ寝てろ」
十希夫は覚えているのだろうか‥夕べのこと。
明らかに俺と十希夫は‥‥。
「あっ、すみません‥軍司さん。俺‥部屋も片付けずに寝てしまって‥」
十希夫は散らばったティッシュが気になったらしく、ベッドから出て部屋を片付け始めた。
その背中にも無数のキスマークが残されていて、どれ程濃厚に愛しあったのかを物語っていた。
「やっ‥やだ‥軍司さん‥あまり見ないで下さい‥恥ずかしい‥」
「おっ?おお‥悪りぃ!悪りぃ‥!」
ある程度、
部屋を片付けた十希夫は再びベッドに入りこんできた。
「あの‥軍司さん‥夕べは‥嬉しかったです‥」
やべー‥肝心な部分を覚えてねぇええ‥!!
「お、おう‥!」
「ずっと俺の片想いだと思ってましたから‥嬉しくて‥あの‥本当に俺でいいんですか?」
「へっ‥?あ、ああ‥もちろんだ!」
そう言うと、
十希夫は見たこともないような無邪気な顔で嬉しそうに笑った。
「軍司さん、大好きです!」と言って、腕にしがみついてきた。
正直、戸惑っていた。
‥十希夫は俺の事を好いてくれているんだ。
きっと酔った勢いで俺も十希夫に「好き」だと言ったのだろう。
泥酔したせいで十希夫を抱いて、自分の溜まっていた欲を発散したのだろう。
でも本当にあの時‥
十希夫が可愛く見えたんだ。
欲情したのは事実。
だから押し倒したんだ。
なのに‥
正気に戻ると肝心な所は覚えてないし‥
十希夫に対して、恋愛感情というものをハッキリと持ってる自覚、自信がなかった。
スリスリと腕にしがみついて、離れようとしない十希夫を見て申し訳ない気持ちになった。
十希夫の事は好きだ。
弟のように、
友人のように、
相棒のように‥。
ただ、
恋人のように‥思える日まではもう少し時間がかかりそうだ。
十希夫‥ごめん‥。
心の中でそう呟き、
そっと十希夫の頭を撫でてやった。
本気で愛せる、愛してやろうと思った。
「十希夫‥」
「はい、」
「キス‥しようか?」
「‥はい、軍司さん」
まずは、
キスから始めさせてくれ‥十希夫。
一途なお前の気持ちを踏みにじるような事はしたくねえから。
end