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□恋人は子猫ちゃん
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『恋人は子猫ちゃん』


あの時の衝撃ったら‥!

ハンパなかった。


「き、清広‥?なに‥持ってるんだ‥?」

「みりゃわかるだろ」


清広の腕の中には、子猫が抱かれていた。


猫も可愛いが、
猫を抱いている清広はもっと可愛い‥‥。

願うならば、猫になりてえええ‥!!


「コイツ、スクラップ置き場の外に捨てられてたみたいなんだよ」

「かっ、飼うのか?」

「うちのマンションはペット禁止だからなあ‥」


清広は、ニャーニャーと鳴く子猫を似合わぬ風貌でヨシヨシと撫でる。


ああああ‥俺も猫になりてぇえ‥!!

俺もヨシヨシされてぇえ‥!

そんな子猫に話しかける清広。


「ん、お前‥腹減ってんのか?」

「清広‥‥‥何か、買ってくるか?」

「お前にしては気が利くじゃねえか‥!」

「待ってろ」


俺はスクラップ置き場の近くのコンビニへと行き、猫のエサとミネラルウォーターを買った。


猫を抱く清広‥可愛いかったなあ‥

そんな可愛い清広を俺は抱きたい‥‥

なんて、
妄想を膨らませながらスクラップ置き場に戻った。


「おー買ってきたぞ!」

「鉄生、悪いな」


缶詰を空けて、エサを食べさせる仕種はまるで母親のようで。

子猫はよほど、腹が減っていたのかムシャムシャとエサを食べていた。


見たこともないような穏やかな表情を浮かべた清広は本当に嬉しそうだった。


「ははっ!お前‥よく食うなー」

清広は子猫の頭をヨシヨシと撫で続けた。



「‥‥‥‥。」

「ん、なんだよ?金ならあとで」

「俺も‥」

「あ?」

「俺も‥されてえ‥」

「あ?」

「清広‥俺も‥ヨシヨシされてぇ‥」

「は?」


なんだよ‥猫ばっかり。

俺だってヨシヨシされてぇ。



「お前なぁ‥なに、猫にヤキモチ焼いてんだよ‥」

「う‥。」


エサをお腹いっぱいに食べた子猫はスリスリと俺の足元に擦り寄ってきた。


「お?」

「バカがうつるぞー」

「なっ‥!猫は俺に懐いてるんだよっ」

ニャーニャーと鳴きながら俺に擦り寄ってきた子猫を抱きあげると、すぐに腕の中でスヤスヤと寝始めた。


なんか‥


清広みてえだ。

俺の腕の中で眠る、お前に‥そっくりだ。


「ははっ!コイツ‥可愛いな‥」

「ああ‥」

「清広みてえだ」

「あ?」

「いつもこんな風に俺の腕の中で寝てんだろ!」

「‥‥‥‥っ!!」



いつもならここで、清広の鉄拳が頭に落ちるところだが‥今日は違った。


一応、殴る体制をとっていたが子猫を抱いている俺をさすがに殴れないらしい。

清広は赤面して、眉間にシワを寄せぶつぶつと文句を言うだけに留まった。

お前に似た可愛い子猫のお陰だ。



********

その後、
将太がスクラップ置き場に来て子猫をみるなり大騒ぎ。



「うへぇー可愛い!」

「将太‥猫、好きか?」

「ああ!」

「‥うちはマンションだし、鉄生んちもダメらしくてな‥」

「マジで!じゃあ、俺貰っていい?」


結局、将太が子猫を貰うことになり俺は子猫にサヨナラをした。

俺と離れる時にひとしきりニャーニャーと鳴いてた子猫に少し淋しさを感じた。

「将太、頼むぞ‥」

「まかせろぃ‥!」


‥まあ、いい。

俺にはめちゃくちゃ気性の荒い子猫ちゃんが傍にいるからな。

チラッと清広を見ると、何故か目が合って思わず笑ってしまった。



end

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