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□原田十希夫はBカップ
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『原田十希夫はBカップ』


軍司さんが巨乳好きなのは知っていた。

俺と付き合う前に散々、巨乳について熱く語られたことがある。

卒業式の日にも、米崎さんから軍司さんがやたらFカップ巨乳にこだわっていた‥と言う話を耳にした。




軍司さんは‥本当に俺でいいのか。


本気で悩むのも馬鹿馬鹿しい、

だって、
俺は男だし胸なんてあるわけがない。

それでも軍司さんは俺の事を1番好きだと、1番愛していると言ってくれる。


本当にいいのかな‥

俺で満足してくれているのかな‥

時々、不安になる。

しなやかカーブも
柔らかい胸もない

ただの男、

軍司さんと同じものがついて
胸も平らで、なんの面白みもないただの‥。



巨乳女子と俺が手招きしたら、軍司さんはどっちに行くのか‥。

こんな考え、くだらない?

軍司さんが好きで好きで堪らないから不安になるんだ。

俺とのセックスで満足出来てますか?
物足りなくないですか?
気持ちいいですか?


女とはまるで違うこの身体を恨めしく思ってしまう。



不安が過ぎる。

いつか、
胸の大きな女性が軍司さんの前に現れて軍司さんを誘惑したら。

俺は‥捨てられるんじゃないかって。

なんの取り柄もない
まして、自信なんて‥



そんな事をぼんやり考えていたら、軍司さんに声をかけられた。


「十希夫‥!やっと、見つけた!!仕事さぼって何してんだよ」

「あっ、すみません‥今、戻ります。」

「いや、いいよ。今日はもうひとくぎりついたし‥仕事は終わりだ。」

「はい、軍司さん‥」


軍司さんと一緒の職場で働けるのは俺にとって幸せだった。



贅沢な悩みなのか。

仕事が終わると、
軍司さんの家で夕飯を食べて、お風呂を借りてそのままお泊り‥なんてことはよくあることだった。

幼なじみだし、
一緒に風呂に入ろうが、
一緒のベッドに寝ようが何の疑いもなかった。


「十希夫、今日泊まっていくよな?」

「え‥っ、はい」


泊まる=セックス は、避けられない。

嫌じゃない
嫌な訳がない

でも、
やっぱり気にしてしまう‥軍司さんの巨乳好き。



今夜も軍司さんの家で晩御飯をご馳走になり、風呂にも入り、後は寝るだけの時間になった。


「十希夫‥」

軍司さんが低い声で囁けば、二人の甘い夜の始まりの合図。

濃厚なキスをして、
優しく髪を撫でられ、
首や鎖骨に赤痣をつけられる。


感じている、反面‥

男の俺にこんな事をして軍司さんは楽しいのだろうか、と考えてしまう。

行為が進むにつれて、着ていたTシャツの下から軍司さんの大きな手が胸へと目がけて滑りこんでくる。


あっ‥‥だめ‥‥


「やっ‥!」


無意識に軍司さんの肩を押し返して、胸に滑りこんできたその手を拒否する。


「十希夫‥?」

「あっ‥いや‥あの‥すみません‥‥」


情けなかった。

あるわけもない胸に軍司さんの手が触れた瞬間、
ガッカリさせてしまいそうで怖かった‥。

平らな胸を、
揉みごたえのない胸を、
触れられた瞬間に、
嫌われてしまうのではないかという不安に苛まれて‥‥気付いたら軍司さんの肩を押し返し拒否していた。


どうか
嫌わないで
嫌わないで

男の身体でごめんなさい

巨乳じゃなくてごめんなさい‥

でも貴方が好きなんです。


「十希夫‥今日は、やめとくか?」

「あっ‥えと‥‥軍司さん‥やっぱり‥俺じゃ、嫌‥ですよね?」

「十希夫‥?なに言ってんだ、お前」

「ごめんなさい‥軍司さん‥ごめんなさい‥」

「何を謝ってるんだ?ほら‥泣かずに話せよ‥な?」

俺は恥ずかしいくらい、ポロポロと涙を流して自分の愚かさを呪った。


「巨乳じゃなくて‥ごめんなさい‥女の子じゃなくてごめんなさい‥」

「‥‥は?十希夫、お前‥そんなこと気にしてたのか?」

「はい‥」


軍司さんは、優しく頭を撫でて頬にキスをくれた。
流れる涙を指ですくって、そしてまた頬にキスをくれた。


「十希夫‥俺はな‥十希夫じゃなきゃ勃たないんだぜ?」

「えっ‥‥」

「お前の事、愛してるって言葉だけじゃ信じられないか?」

「‥‥だって、軍司さん‥巨乳が好きだって前に話していたでしょう‥」

「ああ!あれは‥なんて言うか‥普通に男としてみれば、の話だ。別に巨乳じゃなきゃ嫌だとかじゃねーし、俺は十希夫がいればそれだけで充分なんだぜ。」

「俺で‥いいんですか?」

「まだ言うか?このー‥今夜は寝かせねえぞ!」


そう言って、
Tシャツを一気にたくしあげ、まるで子供が母親に甘えるように胸にスリスリと顔をくっつけた。


「んー‥十希夫、大好きだ!」

「やっ‥軍司さ‥恥ずかしいです‥」

「大丈夫!安心しろ、十希夫!Bカップはあるぞ!」

「もー!軍司さんっ‥」


クスクスと笑いながら、軍司さんは「今度は十希夫のブラ姿が見たい」と調子に乗って話始めた。



結局、
俺の不安は空振りに終わり‥今日も甘い甘い二人の夜を過ごすことになった。

そして、
大事に大事に愛されて、朝まで寝かせられなかったのは‥‥言うまでもない。




end

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