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□素直になれなくて
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『素直になれなくて』


「清広‥痩せたか?」


ベッドで行為を終えた後、おもむろに腰に手を伸ばしてギュッと抱き着いてくる鉄生。

まだ先程の熱が取れぬままの敏感な肌に、その温もりはズルイ。


「‥ん、痩せてねえよ」


受けるほうだって
終わったばかりの行為をまた再開したいと思う時がある。


例えば、今みたいにー



「ふ〜ん‥なんか腰、細くていいよな‥そそるわ‥」

「な、なんだよっ‥それ!」

「清広、安産型だな♪」

「孕めるかっ‥」


腰に抱き着いたままの鉄生の腕を振りはらおうと思えば、出来た。

でも今日はもう少し、

お前に甘えていたくて、
お前を感じていたくて‥

まだ身体に熱を帯びたまま、俺は無理矢理にでも眠りにつこうとしていた。


俺からなんて誘えるわけがない

まして、

"もう一回!"


‥なんて。

言えやしない。



「ん‥清広、今日はやけに素直だな♪」

「どういう意味だよ」

「いつもならこうして、ベタベタすると嫌がるのによー」

「‥‥‥っ!」


悟れよ‥バカ。


「もう寝ろ‥!」

「なーに、拗ねてんだよ‥清広ー!」


もう何もしてこねえなら、寝るしかねえだろっ‥

しかし、
なんなんだ今日は‥まだ身体の熱さが取れてくれねえ‥さっきまで散々に抱かれたのに、まだ足りないのか‥。

一体、どうしちまったんだ‥俺は?

こんだけヤッてもまだ欲求不満?


「て、鉄生‥あの‥あのな‥」


身体が疼いて仕方ねえ‥


遠回しに鉄生を誘ってみようかと、腰に巻き付く鉄生の腕を指の腹でスーッとなぞる。


「‥‥て、鉄生」

「‥‥‥。」

「‥鉄生、あのな‥」

「‥‥‥‥。」


これだけ指でいやらしく鉄生の手をなぞり、誘惑を促しているのに何も反応がない。


チラッと鉄生の顔をみる。

「なっ‥!!!」


鉄生は、すやすやと寝息を立てて熟睡していた。


「‥‥‥ちっ‥」



今日みたいな日は珍しかったのにな‥惜しい事をしたな、鉄生。

俺から誘うなんて事、
二度とねえからな。


体制をくるりと方向転換させ、鉄生の間抜けな寝顔を見て疼いた身体を抑えようと顔を近付けた。


さっきまでの獣のような男らしいお前と、

子供みたいに眠るお前‥


思わず愛しさが込み上げてきて、唇にそっとキスをした。



この温もりが一生消えませんように。


疼いた身体も鉄生の寝顔を見て緩和された。


翌日、
悔しがる鉄生が見たくて

「実は昨日、もう一回シタかったんだけど‥誰かさんは寝ちまうし。残念だったな!」

と、言ってやった。



予想通り、
鉄生は悔しがって

「清広‥!今日は寝ないから3回‥いや4回!」と言っていた。


「冗談じゃねえよ。昨日ヤッたから今日は無しだ。」


俺がそういうと‥
駄々をこねて、
抱き着いて
押し倒して
その気にさせるのがお前の得意技なんだよな。


今夜もお前の間抜けな寝顔を見られると思うと、楽しみだ。



end

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