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□片思い××
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『片想い×2』


ため息をひとつ、
またひとつ。

俺はとんでもない奴を好きになってしまったから。


屋上にいるのが気持ちよくて、

こいつといるのが心地好くて、

時々、ケアレスミスのように手が触れた時はどうしようもなく心臓がズキズキして、

「好き」という気持ちだけが加速度を増してゆく。


好きになってもどうせ‥報われないのに。

そういい恋ほど、気持ちが燃え上がる。


ゼットンの顔を見る度に嬉しさとせつなさが駆け引きを始める。

お前は‥女の話しかしない。
彼女が欲しいだとか、
駅前の喫茶店に可愛い子がいただとか、
エロ本を見てはニヤニヤしてみたりだとか。


俺には到底、無理な話。
そんな奴に俺の想いが届く訳がない‥。


ガチャリ、と屋上の扉が開くとゼットンが現れた。


「おー、コメッ!いたのか!」

「おう」

ソファーで雑誌を読みながら煙草を吹かす、
隣りに座ったゼットンに思わず心拍数があがる。


そんなに近くに寄るなよ‥すげえ嬉しいじゃねえか。

「コメー、何読んでるんだ?エロ本か?」

「バカッ、おめーじゃあるまいし‥昼間から、んなもん見るかよ!」

「ふん、コメはいいよなぁ‥」

「あ?」

「‥彼女、いるんだろ?」

「‥‥‥‥別れた」

「えっ!マジでか!なんでだよ!!」


‥なんで、って。


ーお前を好きになっちまったからだよ‥


「ククッ!そうかーコメもついに、フリーかあ‥」

嬉しそうに天を仰ぐゼットン。

「そんなに嬉しいことかよ‥」

「んっ!」


ニカッと笑ってゼットンは空に向かって、立ちあがって言った。




「チャンス到来ー!」



「‥‥‥は?」

クルリと、俺を見てVサインをして笑った。


「ははっ、なんだよそれ!」

「チャンス到来ったら、チャンス到来なんだよ!コラッ、わかったか?コメッ!!」


至近距離でずいずいと迫ってくるもんだから、可笑しくてつい、俺も笑った。


「ははっ、近けぇよ‥不細工。」

「なにッー!!コラッ、コメ襲ってやる〜!」

「あはは、やれるもんならやってみろよ。」


すると、ゼットンは仁王立ちをして「今日はチャンス到来の日だからな!」

そういって、
大きな手で俺の頬をいきなり包んでチュッと触れるだけのキスをした。

俺は、とっさの事で何が何だか解らなかった。


「‥‥‥っ!???」

「‥‥コメ、俺は‥こういうの慣れてねえからなっ‥!」

「‥‥お前、今‥俺に何した‥?」

「ん、コメにチュウをした!」

「い、威張るな!お前っ‥俺は男だぞ!いきなり‥な、何しやがる‥」

「ん?だって、コメがやれるもんならやってみろって‥」


顔がみるみるうちに赤くなる。

まさか、
大好きなゼットンにキスされるなんて‥。

この女好きなスケベ怪獣に‥。

思わず期待しちまうじゃねえかよ。
大体、「チャンス到来」ってなんなんだよ‥。


「コメ‥顔が真っ赤だぞ‥」

「あ、当たり前だろっ‥!まさか友達にキスされるなんて‥誰が思うか‥!」

「これで‥少しは俺の事も意識してくれるかなって思ってな!」


‥思考回路が一瞬、停止した。

意識して‥って。
いや、むしろ意識してるのは俺のほうで。
ゼットンに片想いしてるのも俺で‥‥。


「あの‥さ、もしかしてもしかするとさ‥お前‥俺の事を‥」

「ガハハハ!だから、言っただろっ!チャンス到来!って。」

「えーと‥あの‥?」

「コメ、好きだ‥ずっと前から。」


真面目な眼差しでゼットンに告白をされた。

だって、まさか、
女好きなお前が俺を?
いつから?

俺に彼女がいた時からずっと片想いをしていたなら‥相当辛い思いをさせていたに違いない。

俺は‥

俺は‥

そんなお前が愛しいよ、ゼットン。

嬉しくて泣きそうな顔をしていた俺を見て、ゼットンは誤解をしていた。

「男に告白されて、気持ち悪いだろう」と。

だから、
俺はすぐに弁解した。

「俺もお前の事が大好きだったんだ」



‥‥その後はご想像通り、ゼットンが泣きながら「コメェエエ〜!大好きダァアアー!」と抱き着いてくるもんだから、俺はそれを喜んで受け入れた。



少し遠回りをしたけれど、これから俺達の甘い関係が始まる。


"お互い、知らずに片想いしてたなぁ‥"

なんて、
こんな間抜けな話もあったんだなって、笑いあえる日もきっとくるんだろうな。




end

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