mainB

□秘密の楽園
1ページ/1ページ

*「秘密の花園」の続きです。




『秘密の楽園』


放課後、いつものように図書室を訪れる。

何やら言い争ってる声が聞こえてきた。


あーあ、また秀吉の奴‥揉め事起こしやがって‥


俺は扉をわずかに開けて、その隙間から誰と言い争っているのかをそっと覗いてみた。



「お、なんだコメじゃん‥!」

何を言い争ってるんだ?あいつら‥。



「誘ったのはお前だからな‥コメ」

「ひでえよな‥あんなことしといて‥その言い草かよ‥」

「お前が淋しいって言うから、抱いてやっただけだろうが‥」



‥‥‥‥‥‥‥!!

えっ‥

どういう‥意味‥?


「‥秀吉だって、"お前が欲しい‥"とか言って乗り気だったじゃねえか‥」

「そっ‥そりゃ‥あの流れだとそうなるだろう?」

「お互い合意だったんだぜ」



なっ‥

なにを‥

言ってるんだ‥


ガタッ‥

思わず腰を抜かして扉に足をぶつけてしまった。

それに気付いた秀吉とコメが俺に駆け寄る。


「マッ‥マサッ‥!」


俺は頭が真っ白になり、腰を抜かしてただ呆然としていた。


あれ‥?

これ‥夢?

えと‥秀吉とコメが‥。


「おい?マサッ‥!!」

「あっ‥」

ハッと我に帰ると、秀吉とコメが俺を取り囲んで心配そうに見ていた。

「マサ、立てるか?ほら‥」
秀吉が手を差し延べる。

酷い憎悪感に襲われた瞬間、俺は秀吉の手をはらっていた。

「イヤだッ‥!触るなっ‥!!」

「マサ‥あのな‥今の話だけどな‥」

「ヤダッ‥聞きたくないっ‥!!」


俺はその場から一目散に走り去った。


何も、

何も聞きたくない
何も見たくない
何も知りたくない

俺は‥俺は‥


秀吉のなんなんだ‥?


一度に恋人と友人に裏切られた。

もう‥なにも考えられねえよ‥。





どこまでも走って、
気付いたら街の外れまできていた。

「‥ここは‥どこだ‥」


見覚えのない風景にぼうっと立ち尽くして、近くの公園のベンチに腰を下ろした。

目を閉じれば、

嫌でも秀吉とコメがセックスをしていたんだという光景が頭を過ぎって‥胸が締め付けられる思いだった。


「うっ‥気持ち悪‥」


二人の会話がフラッシュバックし、吐き気が込み上げてきて思わず俺は嘔吐した。

「はあ‥苦しい‥‥秀吉‥」

どうせ待ってたって来るはずもない。
秀吉の気持ちはコメに向いているのだから。

もう二度と抱かれることも‥


思い出すのは秀吉がどんなに俺を優しく抱いて愛し、大切にしてくれていたか。

昔から。

ずっと、

ずっと。

となりにいるのが当たり前だと思っていた。


‥そりゃ誰だって、
美人なコメに誘惑されれば靡くよな‥。


「マサッ‥!!」


聞き覚えのある声に思わず身体がビクッと動いた。

振り返ると秀吉が汗だくになり真っ赤になりながら、立っていた。


「やっと‥みつけた‥」

どれだけ走り回っていたのか。
ハァハァと息を吐きながら、俺の元にやってくる。

「秀吉‥」

「マサ‥頼む、話を聞いてくれ‥」

「‥ひでぇ髪、ひでぇツラ‥おまけに汗だくだし。」

「お前を探すのに必死で‥」


本当は一秒だって一緒になんていたくない。

でもあのクールな秀吉が髪を振り乱し、汗だくになりながら俺を探したんだ‥と思うと、仕方がないから話だけでも聞いてやる気持ちになった。



「マサ‥俺が本当に愛してるのはお前だけだから‥」

「‥お前、いきなりそれかよっ‥」

「えっ‥」

「普通さ‥、言い訳して、謝罪してから‥愛してる。じゃねえか?」

「あっ‥ああ‥言い訳は苦手だからな。隠す事のない真実だし‥ただお前を愛してるって事だけは信じてほしい!」

「謝罪は?」

「マサ‥本当にすまない‥許してくれ‥俺が悪かった」

「認めるんだ、コメとエッチしたこと‥」

秀吉はばつの悪そうな顔をして、コクンとうなづいた。

改めて知る‥事実。
込み上げてくる嘔吐感。


「うっ‥気持ち悪‥」

「マサッ?」

「さ、触るなっ‥俺に触るな‥」


嫌だ
嫌だ
コメを抱いた手で俺に触れないで
もう二度とキスもしないで

もう二度と俺を抱かない‥で‥?


「うっ‥ううっ‥」

気が付くとー

俺は秀吉の胸の中で思い切り泣いていた。
嗚咽する俺を、秀吉はギュウッと胸の中に閉じ込めて強く強く抱いてくれた。


「ふえっ‥ううっ‥悔しいけど‥秀吉のここ‥すげえ‥安心する‥うっ‥」
「ああ‥俺もだ」

「浮気したこと‥一生‥許さねえ‥からな‥」

「マサ‥」

「別れるかどうか‥まだ答えは出せない‥けど‥今はこのままいてくれよ‥」

「ああ‥」


俺は改めて秀吉の事が大好きなんだと実感した。

秀吉の逞しい胸の中が心地よくて離れたくない。

俺は心の中で酷く葛藤していた。


別れる?

別れたくない

許す?

許せない

離れる?

離さないで

気持ちが駆け引きを始めた。
秀吉を好きな気持ちは変わらない。

友人であるコメに対しても、別に嫌いになった訳じゃない。


ただ‥許せないだけ。


俺は、
最後の審判をくだした。



end‥NextStage.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ