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□Physical
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『Physical』
「クロサー‥?」
卒業して2年ぶりに地元に帰ってきた俺に声をかけてきたアイツ。
その声には当然、聞き覚えがあった。
「‥九里虎。」
「やっぱりクロサーやね‥!?うぉおおー!久しぶりーっ!!クロサーァアアア!!」
2年前、
俺は卒業して東京へ。
九里虎は留年して、そのまま俺達の関係は終わっていた。
「クロサー、髪伸びてたけんね‥間違ったかと思ったばい!」
「ああ‥伸ばしてたんだよ‥」
「長い黒髪、綺麗かねー。思わず身体が疼きだしよるばい‥!」
「ふっ、相変わらずあほな事を‥」
何も変わらない九里虎の笑顔に俺は安堵して、なぜだかホッとした。
「九里虎‥お前、まだ女達とつるんでるのかよ?」
「ほ?‥ふふっ、おなご達とはみーんな別れたばいっ!」
「嘘だろっ‥お前が?」
この歩く生殖器と呼ばれた男が8人もいた彼女と別れるなんて‥!
「何か‥あったのか?」
「なんもなか!ただ、なんとなく面倒くさくなったけんね。そういうクロサーは、おなご出来たと?」
「ああ‥いたけど、別れたから、こっちに戻ってきたんだよ。」
「なっ‥!クロサーはワシのモノやけんね!勝手に恋人ば作るから別れる羽目になるばいっ‥!」
はははっ‥"クロサーはワシのモノ"って。
懐かしいな‥高校時代、よくお前に言われたよな。
まだ、そう言ってくれるのか‥九里虎。
「クロサー、そんならワシとやり直すばい!」
「やり直すって‥別にお前とは付き合ってた訳じゃねえし‥」
「ふおっ!そうなのかっ‥!!ワシは付き合ってるつもりだったとよ!!あんなにクロサーと愛しあったのに‥!」
「お前な‥俺が東京に行ってから、連絡の一つもよこさない奴が‥ほざくな。」
バツの悪そうな顔をして九里虎がシュンと肩を落とす。
「‥単位と出席日数取るのに必死だったけんね‥卒業してからも、おなご達の整理とか就職活動とか忙しかったばい‥すまんな‥クロサー‥」
「ぷっ、まぁいい‥」
言い訳してる九里虎がなんだか可愛くみえて、
またコイツとこうして昔みたいにつるむのも悪くないな‥なんて思えてきた。
「クロサー‥」
「ん?」
九里虎はニヤッと笑って俺の手を取り、ギュッと握って歩き出した。
「なに‥勝手に手、繋いでんだよ‥気持ち悪いな‥」
「またクロサーに出会えたから嬉しくてなあ〜!ハハハハ‥!!」
ちょっと照れくさい‥けど、久しぶりにこういうのも悪くない。
手を繋いで、
俺の、一歩前を歩くお前。
お前の、一歩後ろを歩く俺。
久しぶりに見たお前の背中に欲情したのは‥
ここだけの話。
end