mainB

□Physical
1ページ/1ページ


『Physical』



「クロサー‥?」

卒業して2年ぶりに地元に帰ってきた俺に声をかけてきたアイツ。


その声には当然、聞き覚えがあった。


「‥九里虎。」

「やっぱりクロサーやね‥!?うぉおおー!久しぶりーっ!!クロサーァアアア!!」


2年前、
俺は卒業して東京へ。
九里虎は留年して、そのまま俺達の関係は終わっていた。

「クロサー、髪伸びてたけんね‥間違ったかと思ったばい!」

「ああ‥伸ばしてたんだよ‥」

「長い黒髪、綺麗かねー。思わず身体が疼きだしよるばい‥!」

「ふっ、相変わらずあほな事を‥」


何も変わらない九里虎の笑顔に俺は安堵して、なぜだかホッとした。

「九里虎‥お前、まだ女達とつるんでるのかよ?」

「ほ?‥ふふっ、おなご達とはみーんな別れたばいっ!」

「嘘だろっ‥お前が?」

この歩く生殖器と呼ばれた男が8人もいた彼女と別れるなんて‥!


「何か‥あったのか?」

「なんもなか!ただ、なんとなく面倒くさくなったけんね。そういうクロサーは、おなご出来たと?」

「ああ‥いたけど、別れたから、こっちに戻ってきたんだよ。」

「なっ‥!クロサーはワシのモノやけんね!勝手に恋人ば作るから別れる羽目になるばいっ‥!」


はははっ‥"クロサーはワシのモノ"って。

懐かしいな‥高校時代、よくお前に言われたよな。
まだ、そう言ってくれるのか‥九里虎。


「クロサー、そんならワシとやり直すばい!」

「やり直すって‥別にお前とは付き合ってた訳じゃねえし‥」

「ふおっ!そうなのかっ‥!!ワシは付き合ってるつもりだったとよ!!あんなにクロサーと愛しあったのに‥!」

「お前な‥俺が東京に行ってから、連絡の一つもよこさない奴が‥ほざくな。」

バツの悪そうな顔をして九里虎がシュンと肩を落とす。

「‥単位と出席日数取るのに必死だったけんね‥卒業してからも、おなご達の整理とか就職活動とか忙しかったばい‥すまんな‥クロサー‥」

「ぷっ、まぁいい‥」


言い訳してる九里虎がなんだか可愛くみえて、
またコイツとこうして昔みたいにつるむのも悪くないな‥なんて思えてきた。

「クロサー‥」

「ん?」

九里虎はニヤッと笑って俺の手を取り、ギュッと握って歩き出した。
「なに‥勝手に手、繋いでんだよ‥気持ち悪いな‥」

「またクロサーに出会えたから嬉しくてなあ〜!ハハハハ‥!!」


ちょっと照れくさい‥けど、久しぶりにこういうのも悪くない。

手を繋いで、


俺の、一歩前を歩くお前。

お前の、一歩後ろを歩く俺。


久しぶりに見たお前の背中に欲情したのは‥


ここだけの話。


end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ