mainB

□愛舞屋
1ページ/1ページ



『愛舞屋』


「なあ‥九里虎と黒澤はいつから恋人同士になったんだ?」

十希夫が聞く。

「あほ‥恋人同士じゃねーし!!」

「‥えっちはしてるんだろ?」

「‥お前、それ聞きたいのかよ?」

「聞きたい」

はぁ‥時々、十希夫は突拍子もない事を言う。

そもそものきっかけは、俺が九里虎の家で酒を飲んでて‥まあ、言わば酔った勢いで。ってやつだ。

正直、ベロンベロンに泥酔していた俺は九里虎とやったこともうろ覚えだった。

ただ、その日から‥


関係は始まった。



「恋人つーかよ‥セフレみたいなもんだよ、あいつにとってはな。」

「黒澤‥お前、それでいいのか?お互い恋愛感情みたいなのはないのかよ‥!」

「ない。と思う‥」


俺だってよく分かんねえよ。
ただ、九里虎といると酷く居心地がよくて。
なんだか嬉しくて。安心出来る。


「ヤッてる時とかさ、好きとか言わないのかよ?」

「‥お前、それ聞いてどうすんだよ!」

「いや‥お前が心配でよ‥」

ったく、自分は軍司さんとうまくいってるもんだから余計なお節介を焼こうとしやがって‥。


「俺は言わない。別に九里虎の事なんか好きじゃねーし。」

「九里虎は?」

「‥‥嘘くせぇ愛を語る。」


その時、
教室のドアがバンッと開いた。

「ぐっ‥九里虎‥!」

「クロサー!!なんね!今の話‥全部聞いとったけど‥酷い言いようたいね‥!!」

はいはい。
また始まった、得意の言い訳。

「クロサー‥愛しとうよ。一番好いとうよ‥本気で!!」

「だから‥嘘くせぇ。」


そうやって、電話口でも女に同じ台詞を言ってるくせに。

「まーまー、黒澤信じてやれよ。」

「‥‥女に同じ事、言ってる奴の言葉なんか誰が信じるか。」

「クロサー‥なんね、ワシいつでも本気ばい。おなごの方が遊びばい‥!」


俺のは言ってしまえば、ただの嫉妬に過ぎなかった。


「十希夫、帰ろうぜ」

「あっ、悪い!俺‥今日軍司さんちに行く約束してるんだわ」

「ほ〜!十希夫、軍司の兄やんによろしくなー!」

「ああ!じゃあなっ!」

十希夫は逃げるように帰って行った。


「‥クロサー」

「なんだよ‥」
なんでか解らないけど、こいつといると身体が疼く。

俺の欲望が欲してる。

認めたくない。
認めたくなんかない。

お前に欲情なんかするもんか。

「クロサー‥本気で好いとうよ‥」


身体がビクッと動く。

その言葉、
その声、
お前の存在。

本当は‥‥


お前に組み敷かれたい。


俺の身体をこんなふうにした責任を取ってもらうしかねえよ‥バカ九里虎。


「九里虎‥今日も‥お前んちに泊まる‥」

「クロサァアアアー!!」

「バカッ、よせっ‥抱き着くなっ‥!」


‥だから、理性が持ちそうにないのは俺のほうで。


ま、少しはコイツの言葉を信じてみるのも悪くない。
そう思えた。


結局、
そのまま教室で俺は九里虎にいただかれちまった訳で。

思わないようにしていたけど、極上に気持ちがよくて。

俺は‥
気が付いたらすっかりコイツの手の内に堕ちてしまっていたようだ。


end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ