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□OZの魔法使い
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『OZの魔法使い』
それは、
屋上に住む"魔法使い"。
いつの間にか「好きになる」という魔法にかけられていたのかもしれない。
団体行動は苦手だし
一人の方が気楽だし
馴れ合いは面倒だし
友人も女も適当にいればいいって思っていたし
でも、
屋上の魔法にかかって
俺は恋をした。
その屋上は、
最上級に心地よくて
隣りにいる奴が初めて、俺をドキドキさせた。
‥ゼットン。
告白される事はあっても自分からした事はないし。
当時、俺には一応女もいたし。
ゼットンは屋上でエロ雑誌を読んでは毎日、ニヤニヤしているのを見ていたから‥男には興味はないと思っていたし。
一生「お前が好きだ」と言う事はないと‥そう思っていた。
女といても、頭の中はゼットンでいっぱいだった。
彼女との行為の時は、ついに勃起すらしなくなって無理矢理ゼットンを思い出しては女を仕方なく抱いていた。
だけど‥限界だった。
ゼットンが俺を友達としか、みてくれなくてもいい。
それでもお前と一緒にいたいんだ。
俺は女と別れた。
恋心は加速度を増して、ゼットンへと向かっていた。
毎日、屋上に顔を出してお前と他愛のない会話をしてたまにじゃれあって‥俺はそれだけで、自身が熱くなるのを日々感じていた。
‥堪らなく好きなんだ。
その大きな背中も
逞しい胸も
包みこむような腕も
優しい瞳も
口角がニッと上がる唇も
明るいその性格も‥
ゼットンの全てが好きなんだ。
でも、決して「好きだ」とは言えない。
友達以上、恋人未満な関係。
ゼットンが女好きなのは知っているし‥(あれだけ毎日エロ本見てりゃあな)
男の俺なんて、一人の友人としか思っていないんだろうな。
あ。
そういや、女と別れたこと‥こいつに話してないな。
「ゼットン‥俺、お前に言ってないことあるんだわ」
「ん?なんだ、コメ」
「俺、彼女と別れた」
「なっ‥なぁにぃぃいー!!!なんで!なんで!」
「なんでっ‥て‥いや、好きな‥人が出来たから‥」
「うーん‥そうか‥まあ個人の恋愛は自由だからなぁ‥俺がとやかく言ってもなぁ‥で、好きな人とやらには告白したのか?」
えっ‥!!
本人目の前にして、言えるかっつーの!
「告白はしてない‥俺の片想いだよ」
「んー‥そうか、そうか。ヨシ!俺が応援するぞ!!相手はどんな子だ?」
‥えっ。
言ってしまえば、楽になれる。
でもそれは、ゼットンを困らせるだけ。
「‥本当に言っていいのかよ?」
「おう!俺の知ってる子か?」
「ああ‥ちなみに男だ」
「なっ‥コメ‥まさか!」
「あ、秀吉やマサじゃねえからな‥」
「えっ‥じゃあ‥?」
んーと悩むゼットンが可愛くて暫く放置して、その顔を見つめていた。
「ふっ、そういうゼットンは好きな人‥いないのかよ?エロ本が恋人か?ははっ」
冗談交じりで笑い飛ばしたけど、その答えを聞くのが‥怖かった。
「好きなひと‥いるぞ!」
「っ‥え?」
「俺、好きな人いるぞ?」
「だっ‥誰だよ‥俺の知ってる奴か‥?」
「言ったら、きっとコメびっくりするぞ。」
「なんだよ、教えろよ!」
「じゃあさ、せーの!でお互い一緒に言いあわねえか?」
えっ‥俺、こんな形でゼットンに告白したくないんだけど‥。
もっとムードとかさ‥
なんだかまるで小学生の遊びじゃねえか。
まあ‥ゼットンの好きな相手はかなり気になる。
これで俺が「ゼットン」って言ったら‥俺達の友情も終わるのかもな‥。
「コメ、じゃあ‥せーの!でお互い打ち明けることな!!」
「ああ‥」
「せーの!」
『コメ!』
『ゼットン!』
‥えっ。
あの‥今、俺の名前を言った?
ゼットンも暫く、放心状態だった。
先に口を開いたのはゼットン。
「コメ‥今‥ゼットンって言ったか?」
「ゼットンこそ‥今、コメって‥?」
ぷっ‥と二人で吹き出して、屋上で大笑いした。
嬉しさと恥ずかしさと幸せな気持ちで、思わず大笑いをした。
「なあ‥コメ‥」
「んっ?」
「改めて言うが、俺はコメが大好きだぞ!」
「ぷっ‥はははは!俺も‥好きだぜ‥はははは!」
なんだかあまりにも嬉しくて、俺は久しぶりに心の底から大笑いをした。
「ヨシ!じゃあ‥今日から付き合うか!コメ!!」
「ああ‥俺でよければな‥」
「コメがいい‥!」
そう言って、ゼットンは俺をギュッーと抱きしめてきた。
俺も大きなゼットンの背中に腕を回して、ギュッとした。
「‥コメ、じゃあ‥キスでもするか!」
こいつは‥
経験がないにしても‥ムード作りが下手すぎる。
ま、そんなストレートなゼットンが大好きで。
堪らなく大好きで。
俺は‥、
返事をする前に自分からゼットンの唇にキスをしてやった。
ゼットンは、
どうやらファーストキスだったらしく、ふと顔をみたら真っ赤になり、うっすらと涙を浮かべて感動していた。
「おい‥泣くなよ‥ゼットン‥」
「だってなぁ‥大好きなコメとこうして両想いになって‥チュウまでしたんだぞ‥!」
「‥お前さ、チュウから先に進んだら興奮して死ぬんじゃねえか?」
「チュウから先って‥!!コメ‥!いいのか?いいのか?」
ハァハァと息を切らして興奮気味のゼットンに、
「いずれな♪」と意味深な言葉を残して焦らしてやった。
あたりはすっかり夕暮れ。
今日からは、手を繋いで一緒に帰れるよな‥
なあ‥
屋上の魔法使い。
魔法が永遠にきれませんように。
俺は強くそう願って、
ゼットンの手を取り、手を繋いで屋上を後にした。
end