mainB

□レッド・メガホン
1ページ/2ページ



九里虎と二人で街へ買い物に出かけた。


『レッドメガホン』



「クロサー‥気付いとるん?」

「ん?なにが?」

「さっきからおなごば、擦れ違う度にクロサーを見とうよ、クロサー何気にモテるけんね‥」

「気のせいだろ」

「クロサーは自分の格好よさに全く気付いとらん‥!ま、ワシの前ではヒィヒィ可愛く鳴いとうけんね♪」

「‥死ねっ!」


そう言って九里虎の背中に一発、蹴りを食らわした。


格好いい?
モテる?

は?

お前だろうが。

高校に上がる前は確かに女もいたけど、今は興味ねえし。

たまに駅で女子高生に声をかけられたりもするけれど、そういうのも苦手だし。

本当、女にマメなお前をある意味尊敬してならねえよ。


二人で店に入り、店内をウロウロしてるとー

「あーっ!グリグリ〜!!!」

「おおっ‥エリコー!こんな所で何しとうよ!」

「買い物ー♪グリグリは?」

「ワシもたーい♪」

‥はっ、めでたいやつ。
思いっきりキャラ作ってんじゃねえかよ、あほ九里虎。

「キャア!ちょっと‥グリグリの友達?めちゃくちゃ格好いいーっ!」

「ん?ああっ‥クロサーか!そうね、クロサーはイケメンたいねー♪ワシの次になぁ!ははははは!!」

「やだー、グリグリってば♪ね、ね、紹介してよー!」

‥は?紹介?
冗談じゃねえよ!
なんで俺が九里虎の女と挨拶しなきゃならねぇんだよ!

「クロサー、こっちくるばい!」肩をグイッと掴まれて引き寄せられた。


「初めまして!エリコでーす♪」

「‥黒澤です、初めまして。」

「黒澤くん?本当に格好いいわねー!モテるでしょう?彼女はいるの?」

「いえ‥いません‥」

「エリコ、クロサーはワシの恋人ばい!彼女はおらんとよ!はははは!」


バッ‥バカ!
彼女の前でそれ言うか!
俺ぁ、どうなっても知らねえぞ‥!

「ぷっ、グリグリってばーまたそんな面白いこと言ってぇ♪」


あ、そうきた?

そうか‥確かに‥冗談にしか聞こえないよな‥。


俺と九里虎が恋人同士なんて。


*******

九里虎の彼女と別れ、買い物もそこそこに街を後にした。

「クロサー‥何を怒っとうよ?」

「別に怒ってねえよ」

何が悲しくて、お前の彼女に俺が紹介されなきゃいけないんだよ。
しかも、あっさり恋人発言しやがって!

そりゃあ向こうに取っちゃあ冗談にしか聞こえねえだろうけど、

俺は‥

俺達は‥

恋人同士‥なんだ‥よな?


「九里虎、なんであんなこと言った?」

「ん?」

「なんで、俺を恋人って紹介したんだよ!向こうが冗談で切り替えしたからよかったけどなぁっ‥もし本気にしてたら、修羅場だぞっ‥!」

「そげんこつなったら、答えは簡単ばい」

「えっ‥?」

「もちろん、クロサーをとるばい!」

「‥‥っ。」

「エリコはのう‥クロサーに目をつけとるばい。エリコのあの目は、獲物を狙ってる女豹の目だけんね‥恐らく近いうち‥またクロサーに会わせろとか言うてくるばい。」

「はぁああっ‥?」

「だから、先手を打って恋人発言しとうよ!クロサーをとられんようにのう。はっはっはっ!!」


ったく‥このバカが。

恥ずかしさと嬉しさで、照れ隠しの代わりに再び九里虎の背中に蹴りを食らわしてやった。


「痛っ‥何すんね!!クロサー!今夜もヒィヒィ言わせちょるばい‥!」

「ふっ、いいぜ!」


まさかの返答に、
目を真ん丸くさせた九里虎が硬直してる間に俺は猛ダッシュで、九里虎の前から逃げ出した。


「はっ‥!まっ‥待てクロサー!!今の返事信じとるけんねー!!!」


久しぶりに思い切り笑いながら走ってやった。

全速力で。

あいつに捕まらないように。



捕まったら、

何をされるのかな‥


‥それはそれで期待したい。



end
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ