捨てられ王子と古城の吸血鬼

□捨てられ王子と古城の吸血鬼 2
2ページ/7ページ


縋るように両手をルーシーに伸ばすと両腕を掴まれシーツへと縫い付けられてしまった。
堪らず目を開けると、ルーシーの赤い舌が、自分の胸の粒へと伸ばされているところだった。
「ア・・・ッルーシ〜〜・・ッ・・キスするって、それ・・口にじゃないのかよ・・っ」
ねっとりと舌で押して練って吸われてしゃぶられて、腰が砕けそうになる。
「キスですよ?貴方の全身にキスするって・・言いませんでした?」
そう言ってルーシーが、ゆったりと意地の悪い笑みを浮かべる。
「言ってない・・っ」
重なり合い、密着した下腹から更に熱いものが込み上げてくるのがわかる。
「きっと聞こえなかったんですね」

仕方ありません。目を瞑ったのは貴方なんですから。

そう言って、ルーシーは再び王子の胸の突起に舌を絡めた。
「ンヤッ・・ルーシー・・!」
朝でも昼でも、夜のように暗いこの城の中では時間の経過さえ知る事が難しく、一体どのくらいの時間、自分がルーシーのベッドの上で、こうして裸でいるのかもわからないでいた。

『ダメなんです。こうしていないと、貴方の血を吸ってしまいそうになる』

今にも噛み付きそうな勢いで体を重ねられ、体の深い場所で繋がっていないと耐えられないと懇願してくるルーシーに、力で敵う筈も無く、言うままされるままに体を貪られ、今日も王子は穴一杯に、吸血鬼の精を注がれてしまうのだった。


と、まあ、溺愛ルーシー&王子カップルの仲は良しとして、問題はもう一組みの方だった。



「やめて下さい・・っ」
モモは王子の部屋の掃除中、颯爽と部屋に入って来たオルツガルナに腕を取られ、引きずるように部屋から連れ出されてしまう。
「あ?お前はオレのもんだって言っただろうが」
粗野で乱暴、わんぱくガキ大将がそのまま大人になってしまったようなオルツガルナは、正に、我が侭し放題、誰にも手のつけられない王族の三男坊と言ったところだった。
「私は王子の従者なんです・・っ仕事があるんです!」
「ああ、そうかよ。じゃあオレの用が済んだらやってくれ」
緩く大きくうねるプラチナブロンドの髪がその背で揺れる。その輝く髪の間から覗く銀の瞳の中心には、鋭い赤い火。

獣の眼・・!

この眼を見てしまったモモの体は、噓のように震え出してしまう。

彼は・・人でない者・・!

絶対の強者、野獣の支配者・・!

それでも、勇気を振り絞り、この腕を払い除けなければ、自分は地獄へ落とされるだろう。
天使のように皆に愛され大切にされてきた王子を守ることも出来ず、バンパイアの餌食になるなど、そんな事を国王や王族、この国の民、すべての人間がもし知ったら、絶対に許される筈も無い。

逃げなければ・・!

いくら王族の祖先に当たる方と言えど、その姿形がどんなに美しくても、彼はバンパイアなのだ。
もう人では無い、異形の者。
そんなモノを受け入れる訳にはいかない。

「離して・・!」
そう力一杯腕を振り回した。
つもりだったが、オルツガルナは振り向きもせず前に進む。
足を突っ張ってブレーキを掛けても、全く気にもされずに、絨毯の上を引き摺られてしまう。
「本当に・・やだ!離してください!ちょっと・・ねえ!」
モモは震えながらも、完全に自分を無視し、まるで荷物のように扱うオルツガルナに腹が立ってきた。
思いっきり息を肺に吸い込み、今まで呼ぶ事を躊躇っていた名前を叫ぶ。
「オルツガルナ様!」
その瞬間。
フワリと、長いプラチナブロンドの髪が揺れ、オルツガルナがモモを振り返った。
長い睫毛を伏せ勝ちに、絨毯の上にヘタリ込むモモを見下ろすと、オルツガルナは引いていた腕を離して、モモの前へとしゃがみ込んだ。

見た目20代の後半。
真っ白なスーツの上着はコートのように長く、ボタンが10個もありそうなその上着の前を全開にし、その中は、白いスカーフに白いブラウス。
モモは改めてオルツガルナの姿に呆然となる。
こんな格好が許されるのも似合うのも、ほんの一握りの人間しか居ないだろう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ