戦国BL

□tadamotomete
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鷹峰はよろけながら、登った木から降りられない猫のようなアンジを肩から降ろして、締められた首を撫で摩った。
「殺す気かお前は・・」
「『殺す気』・・?・・どう見ても、ここで殺されるのは僕の方だと思う・・」
確かに、この山中で、この頼りない少年が一人で麓まで戻るか鞍馬へ上るかなど・・
とても出来そうには見えなかった。
もちろん、この山の中で食べ物を調達など・・。
そう。この現代っ子の雰囲気はこの時代で一際儚さを放っていた。
その危うさを男達は命の危うさと同等に受け取り、どうしてもこの生命力の薄い少年を放っておくことが出来なかった。
「世話の焼ける・・」
鷹峰がアンジに背を向けて座り、ホレと背中へ合図した。
だが、アンジは鷹峰の背中に乗ってこない。
「乗れって」
舌打ちして鷹峰がアンジを振り返ると、アンジの姿が無い。
それこそ、そんなバカな!と鷹峰は辺りを見回す、と、斜め下方向にアンジが山を降りている。
「嫁に逃げられたな」
頭上で烏が笑っている。
「嫁じゃねえ!」
一足飛びにアンジの背中を追い掛けた。
「アンジ!動くな!」
危ない!と叫ぼうとした瞬間。
アンジが視界から消える。
「チッあの、バカ!」
鷹峰は飛び足5歩でアンジが消えた場所へ追いつく。
そこには、急斜面の途中で木の枝に必死に掴まり、足場を探して足を動かしているアンジがいた。
「・・・助けてっ」
「当たり前だ!」
鷹峰が前のめりに手を差し出し、アンジもその手を掴もうと手を伸ばした。
が、アンジは片手で体重を支えきれず、木の枝から手が離れてしまう。
「あっ」
一瞬で鷹峰はアンジが落ちるより先にアンジの下まで斜面を滑ると、咄嗟に両足をそれぞれそこにある木の根元に掛け、落ちるアンジを受け止めた。
アンジは体の落下感を一瞬感じただけで、すぐ鷹峰の腕の中に抱えられていた。
鷹峰の背後を見たアンジは小さく息を呑んだ。
急斜面のすぐそこから下は小さな崖になっていて足をつけられるところまで5〜8mはありそうだった。
思わず震えた。
「怖いか」
鷹峰の声にガクガクと頷いた。
「だったら、しっかりしがみついていろ」
言うと同時、鷹峰が唇を押し付けてくる。
「んー!!」
それでも抵抗しようにもここでは体を離せない。
アンジには、『しっかりしがみついたまま抗議の声を上げる』しかなかった。
「キスならもっとちゃんと助かってからにしてって!」
本気で怒っているアンジを鷹峰が真顔で見つめる。
「きすってなんだ?」
アンジは鷹峰に抱きついたまま、「いいから上に上がって!」と怒鳴った。
「ハイハイ。全く自分で責任持てねえことはやるんじゃねえよ・・」
結局、アンジは鷹峰に抱っこされて元いた場所まで戻った。
逃げた上に助けられて、アンジは精神的にも肉体的にも破綻寸前だった。
「もう逃げんなよ。めんどくさい」
地面に降ろされて、アンジは腰が抜けたように座り込んでしまう。
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