戦国BL

□dezome
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部屋の中だったはずだった。

ベッドに寄りかかったままゲームをしてて居眠った。

顔に何か固いものが当たって目を覚ますと、そこは外だった。

体が痛いはずで、大粒の砂利の上で僕は横たわっていた。

右を見ても左を見ても薄暗く街灯も無い。

人も居ない。


夢かと思った。

やけにリアルな夢だと。

掌についた砂利の感触が鮮明で、砂の匂いや、風の冷たさまで、なんて現実的な夢だろうと。

とにかく、寒い。

なにか服が欲しかった。

それで、昔やったRPGを思い出す。

まるで、それだ。

その主人公は服を求めて彷徨い、スタートから僅か数分でdeadしてしまう。

それは僕が服のありかがわからなかったからだけど。

その時は主人公の台詞の『寒い』が意味することがわからなかった。

なぜ、主人公がdeadするのかも。

ゲームの中の室内でカーソルがヒットしたものに思わず笑ったっけ。

まさか、ダウンベストが必要だなんて思うわけない。

僕はどうすればその『部屋』の温度を上げられるのか考えてたんだから。

FFとかでアイテムが光るけど、あれって必然だよ。

情報が有りすぎても、こっちには通じないもん。


とにかく。

僕も服を探した。

いや、人を探して歩き出した。

どこへ?

そんなことわからない。

辺りは草っ原と森。

なのに、自分はパジャマにカーディガンに裸足。

このままでは、ゲームオーバー確実だ。


まさか、遭難したのか?


ふと、思ってバカバカしいと思い直す。

部屋から出てなかったのに、遭難するわけがない。

これは変な夢なんだと、自分に言い聞かせた。

だが、すぐに辺りが本当に暗くなり始め、恐怖心が強くなる。

やけにカラスの鳴き声が大きく聞こえた。

電気が無い。

全く明かりが無い。

裸足で歩いてるから足の裏がズキズキと痛んだ。

疲れも酷かった。

夢の中で走ると全然走れなくて、起きた時疲れてるってことがあるけど、それ以上の疲労感だった。

本当に、現実に、リアルに、痛みや疲れや寒さを感じた。

叫んでしまおうか、迷った。

誰か助けてくれと、大声で叫ぼうかと。

でも、それこそバカじゃないかと妙にそこだけは譲れなかった。

こんなことが現実なはずは無いと。

もし、現実だとしても、誰が信じてくれるだろうか?

しかも「助けてくれー」なんて、叫んだこともない。

震えながら、逆に可笑しくなって笑ってしまう。

なんだこの状況は?

僕は頭がおかしくなってしまったのか?

それとも、ヒッキーの僕の家にぐー○るの奴が来て、疑似外出体験出来るソフトでも僕に試しているのか?

そう、その時はそんな有り得ないことすら有り得る気がしてた。

どう考えたって『戦国時代』にタイムスリップするより最新ソフトの実験台にされてる方が僕には現実味があった。

掌に汗がにじむ。

わけのわからない焦りと体を刺すような冷たい風に震えが止まらなかった。


いくら僕が死にたいからってこんな苦痛を受けたいわけじゃない。

出来れば何の苦痛も恐怖も感じずに死にたい。

そう考えて、なんてチキンなんだと・・自分が情けなく思えてくる。

いつだってそうだ。

自分の望まない展開が用意されてて、僕はリセットボタンを探してる。

今度も違う。

こんなのは僕が望んだ未来なんかじゃない。

ただ僕はここに居る。

それだけなのに、世界は僕の存在を拒む。

干渉しないでくれ。僕はただここで息をしてるだけ。

誰の迷惑にもなっていないはずだ。
なぜ僕に構うんだ?
そう考えて涙が溢れてくる。

泣きながら歩き疲れて、木の下に座るとすぐに睡魔が僕を襲った。

だが、目を覚ますともっと恐ろしいものが僕を襲っていた。
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