捨てられ王子と古城の吸血鬼

□捨てられ王子と古城の吸血鬼4
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 触れたらその瞬間、手の中で消えて無くなってしまいそうな程、繊細なプラチナブロンドの長い髪。
生まれ持った資質というものの恐ろしさを感じ、モモはオルツガルナを見詰める目を細めた。

背中を覆う緩くカーブを描く白金色の髪。その長い髪の隙間から見える切れ長の目の中心には縦に開く赤い瞳孔。その目を際立たせる芯の通った高い鼻梁。それら全てを纏める艶のある柔らかな唇。その一種悪魔的で華麗な美しさに、王族という血筋以上の類希なる資質を感じ、モモは神というものの存在を実感した。

こんなに美しい人間がこの世界にいるなんて・・(バンパイアだけど)
神様でなきゃ、これ程までに計算し尽くされたように美しい人間を作り出せるわけない・・。
いや、そもそも神様が居なかったらバンパイアなんて居ない気がした。

それこそ、神のイタズラというもの。


モモの瞳の中に映るオルツガルナは、その髪を惜しげも無く無造作に掻き上げ、そのまま頭をボリボリと掻いた後、その輝く白金髪から指を抜く。
その一本一本がふわりと揺れて輝き、螺旋を描いて落ちていく。
その美しさにモモの視線は釘付けになった。

なんて柔らかそうで、綺麗なんだろう・・
さわりたい・・
さわって、指に絡めて・・キスしたい・・


そんなモモの恍惚の表情に、モモの顔を振り返ったオルツガルナは驚いて、それからゆっくりとモモの方へ近づいて来る。
「そんなに好きか?」
至近距離でオルツガルナの形のいい唇が動き、モモに返事をする間も与えずに、その唇でモモの唇を塞いだ。

『そんなに好きか?』
この言葉に、モモの胸はギュッと締め付けられ、鼓動が速くなる。

イヤだ、こんなの・・

そう思っても、これは自分の勘違いでしかないという事はわかっていた。
なのに、『そう』聞こえて、モモは真っ赤になって心臓をドギマギさせて、血流を激しくしてしまう。
オルツガルナは自分自身の事を『好きか?』と聞いた訳じゃない。『自分の髪が、そんなに好きか?』と、聞いただけ。

なのに、そう聞かれて、「好きです」と即答出来ない程に狼狽えてしまった。

貴方の髪に触りたい。
指を絡めて撫でてみたい。
その髪を結ってみたい。

欲望は次から次へと溢れ出すのに、すぐに答えられなかったのは、オルツガルナの顔に魅入ってしまったせい。
質問された意図を履き違えて、「(貴方の事が)好きです」と答えそうになっていた自分に、羞恥が沸く。

何を考えて・・私は・・っ

いくら悪魔的な美貌の相手でも、自分がただのエサ扱いだったなら、まだ抗えた。
それこそ、どうにかしてオルツガルナから逃出す算段を考えただろう。
なのに、このバカなバンパイアは自分の命の危険も顧みず、ただのエサを取り戻すために、焼け死ぬとわかっていながら、拉致されたモモを取り返すために真昼の太陽の下へと飛び出した。

その上。
血はバージンしか飲まない、と豪語しているにも拘らず、自分の精液を絞り取るだけの行為の中『もう無理だ』と、モモの上へ覆い被さり、その一線を超えた。

交わってしまった・・、これは、どうやっても取り返しのつかない愚行で・・
私は・・もう二度とオルツガルナ様に血を捧げる事は出来なくなってしまった・・

そうモモが考える事自体が、既に方向を間違えているのだが、全てが終り、もう二度と求められない体になってしまったと思うと、心臓が握り潰されるような痛みに襲われた。

のも、束の間。

歯止めの利かなくなったオルツガルナは、さっきまで生気を無くしていた瞳に、強烈な欲情を滲ませ、まるで獣のようにモモの窄まりを激しく穿った。
体をこれ以上は無い位いに密着させ、狂ったように腰を打ち付けてくるオルツガルナに、モモはただ身悶え、受け止める事しか出来なかった。
いや、無理やり受け止めさせられていたとしか言いようが無い。
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