捨てられ王子と古城の吸血鬼

□捨てられ王子と古城の吸血鬼3
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サンサンと照りつける太陽の上る、午後二時。


玄関に横付けにされた馬車から玄関まで、使用人達が黒い傘を広げる中、颯爽とモモを抱いたオルツガルナが降りて来た。

「オルツガルナ様っもう、降ろしてくださいっ」

肩口に抱きかかえられたモモが抗議の声を上げるが、当然無視。
オルツガルナは、モモを抱いたまま城の奥へと進み、手も使わずに自分の部屋のドアを開けると、モモをベッドの真ん中へと放り投げた。
「オルツガルナ様!」
人を投げないで下さいっ、と体を起こして言おうとしたモモの横へ、オルツガルナが力尽きた様にうつ伏せに倒れ、そのまま動かなくなった。
その姿にモモは思わず息を飲む。
「オルツガルナ様・・?」
恐る恐るオルツガルナの目深に被ったフードをそっと持ち上げて見ると、そこには金髪の髪の間から見えるオルツガルナの青褪めた顔があった。
血の気の無い顔は、まるで陶器の人形の様な美しさがある。が、そんなものはただ美しいだけだ。
弱り切った猛獣のようなオルツガルナの姿に、モモは寒気を覚え、オルツガルナの顔に手を伸ばした。
頬に触れた指先からは体温は感じられず、唇の色は薄い紫に染まっている。
こんなに体の冷えた人間に触れた事がない。

「オルツガルナ様・・っどうしよ・・誰か、人を・・」

モモが身を起こし掛けた刹那、オルツガルナに手を強く掴まれた。
驚きに見ると、オルツガルナの瞼が開き、その瞳がゆっくりと自分を捉え「呼ぶな」と口が動いた。
「でも・・!」
口を開き掛けた瞬間、掴まれた腕を強く引かれ、その勢いで仰向けになったオルツガルナの体の上に引き倒される。
「モモ・・餌をくれ」
そう弱々しく呟くと、オルツガルナは目を閉じてしまった。

餌・・?
エサって・・まさか・・
これじゃ・・

思わず自分の股間に目をやって、モモは瞬時に全てを想像して赤面した。

「無理です!!そんな・・自分でなんて・・しかも、こんな状態で出来る訳っ」

しかも、エサと言うからには、それをオルツガルナの口へ持っていかなければいけないということ。
「やっぱりルーシー様に来て貰って・・」
そう呟いてオルツガルナの上から起き上がろうとしたのを、再び腕を掴まれて胸に抱き込まれてしまう。
冷たい唇に言葉を吸い込まれ、その衝撃に思わずオルツガルナの体にしがみついた。

なんて、冷たい唇・・!
早く・・早くしなくちゃ・・っ
でなきゃ・・このままじゃ、オルツガルナ様が、死んでしまう・・?

冷えた唇を温めるように、唇を舌で舐めて吸い、薄く開いた口の中にも舌を這わせる。
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