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□お泊りデート
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ずっと一緒に居て欲しい。
オレの隣で寝て欲しい。




八柱町が、無神地区に指定されてから2ヶ月が経っていた。
あの日から睡蓮がオレの傍から消え、この体が『神の国への入り口』でなくなったにも拘らず、死神本部は非常事態規制を解かなかった。
その理由は、消えた睡蓮にある。
死神本部で治療を受けた睡蓮は、余剰な力を得て凶暴化したため、死神と争い、逃亡。行方がわからなくなったという。
睡蓮がオレの前から消えて、どこかホッとしつつも、やっぱり彼が居ない寂しさに顔を歪めたオレに、憂火は「オレが居てやる」と頭を撫でてくれた。
憂火は、死神としてオレの警護につき、定期的にオレの体に異常が無いか検査をすることになった。

それが意味する事。
まだ、『神送り』は終ってはいない、という事だ。
けれど。
オレだって思う。
睡蓮がここへ帰って来ない理由を憂火はオレに話してくれなかったけれど、こつ然と消えた睡蓮がいつ戻らないとも限らない。
でも、もしかしたら。
何処かで新しい『神送り』候補と使命を果たしているのかも知れない。
その可能性も否定できなかった。
だって、突然自分に役目が回ってきたように、突飛で唐突でそれくらい荒唐無稽な出来事なんだから。
だと、したら。
寂しくても、仕方がない。
睡蓮には睡蓮の役目がある。
オレの好みの姿で現れたように、きっと今頃、その人の好みの姿に変身していて、もしすれ違う事があったとしても、それがオレには睡蓮だと気づけないだろう。

きっと、どこかで。

そんな風に、前向きに考えられるようになったのも、憂火が傍に居てくれたから。
だけど、オレの傍に居てくれると約束してくれた憂火も、死神と言えども、神の一人。
この八柱町には、24時間以上居る事が出来ないと言う。
そのルールを作ったのが例え憂火本人だとしても、やはりルールは守ってこそのルールだという。
「マジメかよ・・」
「こういうのはなあ、言い出しっぺが守らねえと示しがつかねえんだよ」
「でも、24時間って・・じゃあ土日一緒に居らんないじゃん」
「バーカ。一回、町の外へ出りゃいいだろ」
「そんな・・。じゃあ、もし。1日デートして夜、家でエッチして、その朝には慌てて外出なきゃなんて・・雰囲気ぶちこわしじゃんか。なんかさ〜そんなの・・不倫してるサラリーマンみた」
バシッと憂火の手がオレの頭を叩いた。
「イッテ・・!なんで叩くんだよ〜」
「お前が下品なこと言うからだ。オレは死神としてお前を守るためにここに居るんだ。何が土日だ、デートだ?・・雰囲気がどうのなんて関係ねえ」
キッパリと切り捨てられて、オレは口を曲げて憂火を睨みつけた。

ヒドい・・っ
ヒド過ぎる・・!
絶対、憂火だって、本当はオレの事好きなくせに・・っ
オレとずっと一緒に居たいって思ってるくせに・・っ
クソ憂火・・アホバカチンポコヤロー!

この瞬間、オレはある計画を思い立つ。
この週末は憂火をなんとしても八柱町から出さない。
前に聞いた説明では、24時間以上、この町に神が居続けた場合、死神本部から駆除部隊が派遣され、捕縛&強制排除されるらしい。
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