戦国BL

□野獣の恋心
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愛しくて。
愛しくて・・。


それは、どんなに強く屈強な鋼の精神を持ってしても、抑え付け難い感情。
胸に沸く仄かな感情が、一体どこからやってくるのか、鷹峰は自分の体の事だというのに、まるでそれがわからなかった。
胸の内に沁み渡り、さざめかす淡い温もりに、鼓動が静かに高鳴っていく。

藍色に染まる空の下、鷹峰はアンジの細腰をきつく抱き締め、顎を指で取った。
わずかに引き上げられた顔、その目の美しさ。
艶のある黒目が瑞々しく輝き、目の縁を濃い睫毛が覆っている。
眉がやや顰められ、何かしらの不満を持って自分を睨み上げるが、それすらも愛おしかった。
可愛くて、愛しくて、抱き締めているのに、どうにも堪らない。
そんな不思議な気持ちに満たされ、それと同時に、どこか不安定な自分を感じるが、その動揺までも、なぜか心地よく感じている。

愛しいのだ、どんな者よりも。

我が身を思うよりも、ただ愛しく。
胸を焦がし、情念に溢れ、愛しさはどんどん増していく。
脈打つ鼓動が激しく耳に鳴り、どうにも出来ないもどかしさから、鷹峰は力任せにその身を掻き抱いた。
すると、アンジがか弱い力で自分の胸を押す。
柔な力で藻掻く姿は、いやいやをする子猫のようで、可愛らしくて堪らない。
どんなに爪を立て、いやいやと身体を捩られても、抱き締めた腕から力を抜こうとは思わない。
しっかりと腕の中へ抱き、ぴたりと合わせた胸から、アンジの体温や胸を喘がせる呼吸や心臓の音を感じて、一際身体に熱が籠った。

どうか、醒めない夢であって欲しい。

この腕の中の儚い存在が、たった一度、瞬きしただけで消えてしまいそうで、不安になる。
これが夢なら、掴んだものが砂のように掌からサラサラと流れ出し、自分は昨日までの自分のように、再び抜け殻のような身体に戻るだろう。
そんな唐突に起きる悲壮感が、最悪の場面を想像させた。
闇の中にただ一人取り残されるような、孤独感。
繋いでいたアンジの手はどこにも無く、手は空虚を彷徨う。
「アンジ・・!」

失くすのは、一度きりでいい。
もう二度と失いたくはない。

今、ここにある幸せさえ、いつ崩れるかも知れない焦燥に駆られ、鷹峰はアンジの帯に手を掛けた。

これは、俺のものだ・・。
アンジの身体も、心も、全て、俺のものだ・・っ

下衣の弛みにアンジの身体に緊張が走った。
ピタリと合わせた胸から、アンジの心臓の音が大きくなるのを感じる。
「いや・・」
アンジは震える手で鷹峰の襟を握り締めた。
「頼む、触れさせてくれ・・ずっと、ずっと、お前が恋しくて、仕方なかった・・っ」
アンジの耳に響いたのは、鷹峰らしからぬ、絞り出すような枯れた声だった。
「アンジ・・お前がいなくなって・・、俺は・・っ」
空っぽになってしまった。
お前が居なくなり、何もかもどうでもよくなってしまった。
こんなにも大きく、アンジの存在が俺の中を占めている。
「アンジ・・抱きたい・・アンジ・・っ」
「ヤ・・!いや・・っ」
身じろぎするアンジの身体を強く抱き寄せて押さえつけ、剥き出しにした下腹同士を擦り合わせた。
「鷹峰・・っあ・・やだ・・っこんな・・っダメっダメっ」
顔を強ばらせ、必死に縋り付いてくる身体を、指先で解していく。

アンジの吐息が熱を持つのに時間は掛からなかった。
アンジがこの時代へ飛んできてから、殆ど毎日のように、その身に男を咥え込まされていた身体だ。
わずかな刺激にも、その色は鮮やかに浮かび上がる。
嫌だと思うアンジの気持ちとは裏腹に、身体は素直に反応を示した。
太腿を抱えられ、腰が鷹峰の上へ乗り上げる。
前をはだけさせられ、鷹峰の熱り立った肉棒が無理矢理にアンジの股ぐらを擦った。
無防備に開かれたアンジの狭間を鷹峰の欲棒が行き来する。
それも鷹峰の先走りに濡れ、その動きはまるで注挿のようにスムーズだ。
突き上げられてでもいるような感覚に、アンジは背筋を戦慄かせた。

や、やだ・・!挿ってないのに・・!?奥が・・っ奥がズキズキする・・!!

まるで犯されているように呼吸が荒くなる。
吸っているのか吐いているのかわからなくなったアンジは、鷹峰の胸へ縋り付いた。
その顎を鷹峰の指に掬われる。
ゆっくりと唇が合わされ、一度離した唇が、目の前にある。
見上げれば、鷹峰が心配そうな顔で自分を見つめていた。
鷹峰の労るような口付けに、アンジの胸がザワついた。
どうしたことか、アンジの中に苛立ちめいた気持ちが沸き上がっていく。

いいのに・・。
僕の事なんか、心配しなくたっていいのに・・。
いつもみたいに、無理でも何でも、奪えばいいのに・・!
力ずくで、・・好きだって、僕を好きだって言えば、それでいいのに・・っ

鷹峰の襟を掴んでいた手に、グッと力を入れて、アンジは伸び上がった。
鷹峰の唇に薄く口を開けて、口付け、舌を出した。
途端に、アンジの舌が、鷹峰の窄めた唇に吸い上げられる。
と、同時に浮いた腰、尻肉の狭間に滑らせた指が、ツプと内側へと潜り込んだ。
敏感に全ての刺激を受け止めたアンジは、閉じられない内腿を痙攣させ、鷹峰の指の侵入を知らず歓迎してしまう。
鷹峰は人差し指と薬指で、アンジの尻穴を器用に広げると、その窄まりに当てた中指で、アンジの肉壁の中、何度も何度も指を出し入れした。
「ふ・・んん・・っふぁ・・っ・・・くっ・・!」
口腔を熱い舌で嬲られ、くすぐられ、溢れる唾液を啜られて、甘く唇を歯で噛まれる。
息継ぎする間も惜しく、濡れた唇を合わせ合い、アンジは自分自身、鷹峰を激しく求めている事に気づいてしまう。

鷹峰・・!
鷹峰、抱いてよ・・っ
ぐちゃぐちゃにしていいのに・・っ
どんなに僕が抵抗したって・・メチャクチャに抱いたじゃん・・鷹峰・・!

鷹峰の中指が、アンジの肉穴の間隙に埋め込まれる。
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