戦国BL

□saikyouno otoko2
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その腕が、鷹峰の頭上数センチの所で止まる。
鷹峰の全身から一気に汗が噴き出した。
鷹峰は鈍く光る白刃を見つめ、浅い呼吸を繰り返した。
その間、蒼井が辺りに耳を澄ませる。
「何の音だ・・?」
蒼井が不振に窺う中、今死の淵に居た鷹峰には、その微かな音を聞き取る能力など残っていなかった。
ただ自分の心臓の音が、流れる血脈が耳の中を激しく打っていた。
だが、立ち竦み、刀を下ろした蒼井は異変を感じ取ると、その場で自分の足の手当を素早くする。
胸元から出した手ぬぐいを縦に裂くと、左の脛にきつく巻き付け、解けないよう結び目を硬く結んだ。
その直後だ。
地響きに地面が微かに揺れ、怒号のようなものが空気を伝ってくる。
「なんだ!?」
「アンちゃんが危ない」
蒼井は、鷹峰の腕を取ると立ち上がらせ、自分が切り裂いただろう脇腹から背中の衣服を持ち上げて傷を確認する。
と、鷹峰の胴には、鉄で出来た鎖帷子が巻かれていた。
「どうりで硬い音がしたと思った。走れるな?行くぞ」
そう言ったが早いか蒼井が駆け出す。
その後を慌てて鷹峰が追いかける。
雑木林の中を枝を避け、身を屈めながら土を蹴る。
「一体どういう事だ!?アンジが危ないって!?」
「大殿が、アキヒサの親父が、動いた。いつか来ると思ってたが、今日動くとはな!」
「大殿・・?それとアンジが関係あるのか!?」
雑木林の向こう側の木に、蒼井が繋いでいた馬を見つける。
手綱を取り、ヒラリと蒼井が鞍に股がる。
その馬の後ろから鷹峰が、馬跳びの要領で蒼井の後ろへ飛び乗った。
鷹峰に飛び乗られて驚いた馬は、頭を下げて全速力で駆け出す。
「大殿はアンちゃんを気に入ったらしい。アキヒサは逃げず、籠城する構えだ」
「籠城!?」
鷹峰は山道を走る馬の背から後ろを振り返った。
遠くでドドドドド・・と地響きが聞こえて来る。


戦が始まる。
それも、バカみたいな親子喧嘩だ。
そのついでにアンジまで巻き込んで、本気で戦しようってんだから正気の沙汰じゃねえ。


「飛ばしてくれ!」
「わかってら!」
蒼井が馬の腹を蹴って、足を急がせた。
田畑を抜ければすぐに城下だ。
逸る気持ちを抑えて、鷹峰は蒼井の背中にしがみついた。
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