戦国BL

□tumeato
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唇に乗せるだけの嘘がある方が、マシだ。
何も言えないのは、何も隠せていないのと同じ。

現実を見る事の辛さは、自分が傷つくと同時に相手も傷つけていく。
全てを隠す事がいい事じゃ無いのかも知れない。
だけど、隠さずにいられない事もある。

うまくやれない自分に何度も落ち込み、傷つけただろう相手に慰められる惨めさ。
そんな優しさに飢えて、縋って、また心を締め付けられる。
絡み合わせた指先の体温が上がってく。
しっかり、離さないようにきつく握り、繋ぎ止めた。




「アキヒサ」
僕の腕からやっと戒めが解かれ、アキヒサが自分が羽織っていた着物を僕に掛けた。
僕は恐る恐るアキヒサに腕を伸ばした。
縛られていた腕は少し痺れ震えていた。
そっと指先で触れたアキヒサの顔から伝わる体温に目の裏が痛くなる。
少しやつれた頬。
結ってある髪が所々ほつれ落ちているせいか、すごく疲れているように見えた。
体もきっと痩せたんだろう。
あの筋肉質だったたくましい肩や背中が細く感じて、どうしようもない涙が込み上げてくる。
「アキヒサ」
「アンジ」
名前を呼び合うしか出来なかった。
何を聞いても、どんな答えを返されても、アキヒサがどんなに辛かったか知るのが恐かった。
「アキヒサ・・」
両腕でアキヒサの肩を抱いた。
いつもなら、同じように僕の背中に回ったアキヒサの腕が僕以上の力で、僕をキツく抱き締めるのに、その腕の感触が、背中に感じられず、その切なさに僕はアキヒサの肩に顔を埋めた。

僕は、初めて戦争の恐さを目の当たりにする。
僕が生きてた世界では、ネットの中でしか戦争は起っていなかったんだ。
どこか遠くの場所で、誰かが死んで、誰かが泣いて、赤ん坊が痩せて、死体が山のように積み上げられて。
そんなスゴい映像を当たり前みたいに毎日見ていながら、全く、その恐怖を感じられてはいなかった。
誰だかわからない人間が傷つくのと、身近で大切な人が傷つくのでは、雲泥の差があった。
どうしてこうなってしまったのかと、何を責めていいのかもわからない怒りや悲しみが、胸の中で渦巻く。
そして、それは自分にはどうしようも出来なかったという事実が、更に自分を責めた。
何も出来なかった。
ただ待っていただけだ。
アキヒサが、別れたあの姿のまま、また僕を迎えに来るのをただ待っていた。
それが、こんな風に覆されるなんて思いもしないで・・。

アキヒサの力の入らない右腕に恐る恐る触れ、握った手の指が意思を持たずただそこにあるだけで。
僕はその手を握り、握り返して来ないアキヒサの手に、なぜだか傷ついていた。


僕のせいでは無い。
だけど、どうしてこんな体にアキヒサがされなければならないんだろう?
なぜ戦争があるんだろう?
なぜ殺し合うんだろう?
誰がアキヒサをこんな体にした?
許せない。
絶対、許せない。


自分の胸にアキヒサの腕を抱き締め、ついに、堪えていた涙を僕は零してしまった。
いつも僕を抱き寄せ、抱き締めてくれたアキヒサの腕。
髪を、頬を、優しく撫でてくれたアキヒサの腕。
その腕が、ただ重く、アキヒサの肩からぶら下がっていた。
「アキヒサ・・っ」
泣き出す僕をアキヒサが左腕で自分の肩へと抱き寄せた。
悲しい。
悲し過ぎる。
僕は打ち拉がれて、ただ声を殺してアキヒサの腕を抱き締めて泣いた。
そんな僕を、アキヒサが「泣くな」と慰める。
「お前が泣くと、俺が悲しくなる」
と、アキヒサに抱き寄せられ、ゆっくりと唇を寄せる。
少し乾いた唇が二度三度ただ重なり合う。
熱い吐息を吐き出し、一度顔を離して、お互いの目を見つめ合った。
アキヒサの細められた目がただ真っすぐに見つめてくる。
一心に自分を見つめるその瞳で貫かれて、僕は胸に込み上げる愛しさに、アキヒサと唇を深く合わせた。
息も出来ないくらい、僕達は唇を噛み合わせ、絡み合わせた舌を吸い、何度も柔らかく歯を立てていく。
時々ズキッと刺すような痛みも快感という刺激に変わり、お互いの舌を取り合うように絡みつかせた。
アキヒサの唾液を掬って舐めて、アキヒサも同様に僕の口の中で暴れてくる。

もう我慢なんて出来やしない。

立場や戸惑いや羞恥心も、何もかもかなぐり捨て、めちゃくちゃに抱き締め合い、口の中を貪った。
「好きっ・・好きっ・・アキヒサ・・っ」
「ああ、アンジ・・お前に会いたかった・・会いたかったぞ」
僕は膝立ちになり、両手でアキヒサの顔を挟むとアキヒサの顔を上に向かせて口付けた。
僕の腰に回されたアキヒサの腕の力強さに、僕の中心がドクドクと高鳴り昂っていく。
その気配にアキヒサの手がサッと尻の狭間へと触れ、その手が止まった。

「あ・・・」

僕は恥ずかしさから、慌ててアキヒサから体を離した。
触れられて緩んだそこから内腿へ伝うものがある。
急いで膝を閉じ、その場へ座り込む。
「僕・・っ汚れてて・・」
言えるのはここまでだった。

なんて惨めで、汚い身体だろう・・。
ついさっきまで両腕を縛られ、力で捩じ伏せられ、それでも喘がされイカされた尻孔が、アキヒサに触れられた途端、貪欲に開こうとしている。
しかも、身の内にアキナガのモノを残したままで。
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