戦国BL

□tadamotomete
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『信州の鞍馬』、と言えば修行僧なら誰でも一度は憧れる名前だ。
あらゆる荒行・苦行をクリアした言わばアスリート僧の集まり。
いや、僧兵の精鋭、アジアで言うなら少林寺、洋風なら三銃士?

そして、一筋縄でないところが双方との共通点だ。

「まったく、歳かね〜。体力無くなるワ」
あの後気を失ってしまったアンジを肩に担ぎ、鷹峰は早足で駆けていた。
出来るだけ人目を避け、飛ぶような足取りで森を抜け、岩山を飛び、天上山を目指す。


山の中をヒョイヒョイと飛び、駆けていると、
「鷹峰、オンナか」
木の上から烏が飛び立ってくる。
「いやオトコだ」
答えると、烏は羽ばたき、鷹峰が急ぐ先の枝へととまる。
「嫁か」
「アホか。オトコとは結婚せん」
走りながら憮然と答えると、烏が口に片翼をあて、人間が笑っているような仕草をした。
「オンナの尻が赤いぞ」
「ウルサイ、こいつはオトコだ」

鷹峰は動物と話が出来た。
というより、動物が鷹峰に話しかけてくるのだ。
それがきっかけで鷹峰は6歳で鞍馬に上った。
幸か不幸か、異例の出世だろう。

「あっちぃー!」
流石に人1人を担いで山を一息に駆け上るには無理があった。
6合目まで来たところで、鷹峰は川辺で足を緩めた。
この辺りにくると急斜面ばかりで、川もところどころ小さな滝になっている。
座れそうな岩を見つけ、担いでいた『荷物』を降ろす。
「まったくスースー寝やがって・・」
川の水は冷たく澄んでいた。
その水を軽く頭に被ると、一気に体の火照りがとれる。
岩の上に寝かせたアンジを振り返った。
アンジの顔に涙の流れた跡がついている。
それを見て胸が疼かないわけじゃない。

無理強いした。
いくら心を折るためとは言え、ついやり過ぎた。

「アンジ、起きろ」
顔を数回叩くと、アンジの瞼が一度ギュッと閉じ、それから薄らと瞼が開かれていく。
目が覚めたのを確認してから、鷹峰は水を口に含んだ。
アンジの体を半身抱き起こし、顎を取る。
そして、口に含んだ水を、アンジに飲ませた。
アンジは素直に喉を鳴らして、水をコクリと飲み込んだ。
「どこ、ここ・・」
「鞍馬に向かっている途中だ」
「あぁ・・そっか、拉致られたんだ?」
アンジはゆっくりと鷹峰の腕の中で 体を起こした。
が、まだ夢現な 表情で、くったりと鷹峰に体を預けている。
何気なく、鷹峰はアンジの顎を掬い、唇を重ねた。
また水を飲まされると思ったアンジは無抵抗でそれを受け入れてしまう。
「んーっ」
厚みのある胸を押してみてもビクともしない。
「抵抗すんな」
ヒョイと、鷹峰はアンジを再び担ぎ上げた。
「わっわーーー!あぶな!!」
慌てて手足をばたつかせるアンジを気にもせず鷹峰は走り出す。
そんなバカなとアンジは思わず鷹峰の頭にしがみついた。
「放せ!前が見えん!!」
「落ちる!落ちるーーっ自分で歩く!」
「歩いて着くか!このヤロ!襟を締めるな!」
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