戦国BL
□dezome
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全部ユメだ。
そう思うのは容易かった。
全ての思考を止めて、全身の力を抜く。
このまま死ねたらと、自分の首へ手を這わせ、開いた掌で軽く押さえてみる。
ドクドクと血の流れる音を聞きながら、死の世界を想像してみる。
そこには苦痛も恐怖もない。
ただ、一面花が咲いてる。
そこに僕は一人佇む。
しあわせだろうか?
いや、死んだ後の事をしあわせだなんておかしな表現だ。
自分がこの酷い世界から逃げられたら、それだけでしあわせだと感じるだろう。
だから。
だから、死んでみたいと。
なにもかもから解放されたいと。
死に、
アコガレタ。
「なにをしている」
言葉に怒気と冷気を孕んだ強い口調と荒々しい動きで、そいつは僕の両手を掴むと寝床から一気に放り出した。
「イッ・・!怪力め・・」
見ると、寝床から2mは放り投げられていた。
この部屋が広くなければ、屋外へ放り出されていたところだ。
「この程度で怪力とは笑わせる。だが、なぜお前は自分の身分もわきまえず、俺に物を言う?」
ゴツゴツとした拳と、幾筋にも分かれた硬い筋肉の浮き上がった腕が、僕の胸ぐらを掴んで無理矢理に引き起こす。
そいつの顔が目の前に迫るのと同時に、引き上げられた僕の体は半分、地から浮く。
支えを無くし、膝立ちの高さより少し上に固定され、僕は慌ててそいつの服に掴まった。
「誰が触れて良いと言った?」
そのまま後ろへ飛ばされて、今度こそ僕は壁に頭を打ち付けた。
「アァ!・・・ッ」
「悲鳴まで、まるで女子だな」
口の端を歪めたソイツが、打ち身に痛がる僕の服の裾を持って捲り上げた。
慌てて、隠してももう遅い。
そいつは真剣な顔で僕の下半身を凝視している。
「タマつきとは不思議でならん。なにかの間違いかも知れんな・・・」
「放せってば・・・!」
やっとで裾を奪い返して服の合わせを直した。
そいつは嘲るように笑って、今度はそいつの後ろにいる男を振り返る。跪き顔を伏せた男にそいつは僕を見てみろと命令した。
顔を上げた男と目が合う。
「いったいこの世のどこで、こんなひ弱な男が育つのだ?」
「・・さあ、私に聞かれましても・・」
「お前でも知らんと言うのか・・」
「申し訳ありませぬ。男子たるもの豪に生き、豪に死す。それ以外にありませぬ」
「そんなものは万人が知っておるわ。では、これは何だ?」
「・・・わかりませぬ」
「聞いている!これは何だ!?」