捨てられ王子と古城の吸血鬼

□捨てられ王子と古城の吸血鬼
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そして、朝を迎える。
いつの間にか座ったまま寝てしまったモモは目を開けて、自分の居場所に混乱した。
「モモ?起きたか?よく寝てたな〜お前」
その声にガバリと体を起こすと、なんと自分が屋根付きの天涯ベッドの真ん中で大の字になっているではないか!
「うわーー!!どうして私がこんな所で!!」
「オレが抱っこして寝かせた。お前結構軽いな。どうだ、このベッド、寝心地いいだろ?」

クスクスと天使が笑いながら、ティーカップを片手にお茶を飲んでいる。

ふわりと揺れる金色の髪に、輝く銀の眼。
透けるように白い肌は、まるで乙女のようだ。
それでも、王子は15歳を超え、少年らしい体つきになってきた。
少し前なら少女と見間違う程頼り無気な雰囲気を纏っていたが、それも今は無い。
が、まさか、自分を抱きかかえられる程の腕力があったとは知らず、モモは王子の発言に仰天した。
こんなに男らしい方だったろうか・・?
蝶よ花よと育てられた筈なのに・・。
たった1日で、王子が大人になってしまったようで、モモは急な王子の成長に戸惑いを隠せなかった。
「王子・・、私には何でも話して下さいよ?私は、王子が思ってる事なら、何だって知りたいんです」
ベッドから降りたモモが泣きそうな顔で訴えると、王子はプッと噴き出した。
「すごい事言ったなモモ。まあ、それでもいいけど。お前はオレの兄ちゃんなんだもんな?オレは何も隠してないし、隠す事も無いよ」
そう言われて、昨日冗談混じりに言った台詞に羞恥が沸く。
それでも、どこかホッとしつつ「あれは冗談で・・。とにかく約束ですよ?王子」と、王子の手の甲を取るとそこへ忠誠の証のキスをした。

「それより、モモ。この城はやっぱりおかしいぞ」
「おかしい?」
「そうだ。見てみろよ。窓が開かないんだ。開けてみようとしたんだが、外から鍵が掛かってるみたいでビクともしない」
「そんな、まさか・・」
モモは窓の前に立ち、ガラス戸を開いてから、雨戸を広げようとした手の形で動きが止まる。
「んん〜〜〜ッ開かない!」
「だろ?」
「まさか、ドアもですか!?」
部屋の中へ閉じ込められたのかと不安になったモモは扉へと向かって急いだ。
「いや、そっちは開く」
王子の言葉通り、部屋のドアは少しギイと嫌な音を出して、難なく開いた。
だが、この廊下も、全く日の差す隙間が無い。
「それに、この城の召使いは老人ばかりで、朝っぱらから城主が居ない事を聞いても『存じません』の一点張り。窓が開かないのも、いつもの事らしい」
「どういう事でしょうか・・」
「さあ。本人に直接聞いてみるのが早いだろうな」
「何か隠し事があると?王子・・秘密と言うものは、そう簡単にバラしてくれるものでは・・」
「秘密ならな」
そう、どこか自信ありげに笑った王子は、ルーシーの正体が何かを感じ取っていたのかも知れない。
昼間でも夜のような城の中で、ルーシーとその小性アランを探したが、何処にも姿が見当たらなかった。
「城主自ら、出掛けるのに、誰にも告げずに行くなんて・・」
モモは最後の砦の玄関の扉が開くか試してみた。
が、やはり、そこも開かなかった。
「ダメです。どこの窓もドアも外へ通じるものは開きません」
「閉じ込められたか・・」
「ですが、食料もちゃんとありますし・・水も出ます。この屋敷の中での生活なら、特に困る事はありません・・。ただ、外に出られないだけ」
玄関ロビー前の階段に腰掛けた王子が首を捻る。
「もしかしたら・・これは、逆の意味があるのか?」
そう呟いた直後「ご名答」と声が聞こえ、王子が腰掛けた階段の上からルーシーが降りて来るところだった。
コートのように長い黒い上着を羽織り、3重になった金の鎖でその襟を留めている。
「このような不躾な行い、深くお詫び申し上げます。ですが、こうしなければ、あなた様をお守りする事が出来ないのです」
「守る!?じゃあ敵が来てるって事ですか!?」
モモがルーシーの前へツカツカと歩いて来るのを、ルーシーが手で制し、更に一歩下がって距離を取った。
「申し訳ありませんが、これ以上は私に近づかないで下さい」
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