太陽と魔女。

□puppet play.
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「Ms.神村は居残りだ」






静まる教室に彼女の返事は無かった。なぜなら彼女は眠っていたから。

授業が終わっても寝ていた。


バシッと教科書を丸め頭を叩くとやっとゆっくり目が開く。



「千代、今期の分すべてが不足だ。」

「うそ…留年」

「残念ながらそんな制度は無い。」

「どうしたらいいんですか?」




「今日から毎日薬品庫と教室掃除及び真実薬についてのレポートだ」






千代はうなだれていた。
目が覚めた様に立ち上がる。



「わかりました…なら…今は寝ても良いんですよね…おやすみなさぁい」



良いわけがあるか。
そう言いかけるが彼女はすやすや眠る。最近は夜中に抜け出す癖がついているのは知っていた。


イベントを嫌うかのように自らは参加せず、眠っているのが多かったが、ハリーポッターを護り、セブルスやドラコを護り、睡眠時間をこれくらいしか無いのだろう。
と妥協してみるが、彼女は不可思議だらけだった。
何故彼女が自分から横取りし、何故彼女は自分を守ると何を知ってどう思い感じそうしているのか。
そっと頭を撫でる。

さらりとして肌触りが良い髪の毛。

自分とは全く異なる肌触りに不思議と心地好い。






彼女は夢の中では本を読んでいた。







「……どうして、いる、の?」


首を傾げた彼女はぱっちりとした瞳、顔色も良く、ランジェリー姿だった。


膝に本をかけて読んでいた彼女は驚いたのか瞬きさえしていない。


「なぜ、我輩が解る」

「だって…」


苦い顔をして続けるのを止めていた。

当たりには自分の部屋の様にそれよりも遥かに多くの本があり並べられていたり散乱していたり床に不安定に積み上げられていたり。まるで図書室にベッドが置かれているような違和感に陥る。
一冊手にすると真っさらなページ。何も書いていない。


千代は本に目を移し読んでいた。


「先生にはつまらないですよ…先生には読めませんから」

「魔法か」

「いえ、違います。これら全部"私の本"だから私にしか読めないだけです」


はきはき喋る彼女は別人のようだったいつもはまったりのんびり口調だから。たまにはきはきしても怒らせていた。



「此処には紅茶もなにもありませんよ。先生にはつまらない場所です。お帰り下さい」

「お前は何を読んでいるんだ」

「エロい本…」

「!」

「ではありませんよ」


目もくれずにそう告げると本に取り付かれたように黙って読む。次第に寝そべり足を曲げてぶらぶらさせていた。ぱたりと止むと眉間を寄せてページを戻したり何かをブツブツ言っていた。

艶めかしい仕種に感じてしまったのは疲れているからだろう。
本のすべての文字が消えていた。
見て回ると一冊覚えのある肌触りの本を手にする。

何故これが、と千代を見ると涙を袖で拭う姿に聞けず仕舞い。
ふと、起き上がりスラスラと紙に何かを書くと破り捨てる。
暫くするとゆっくりと本を閉じて千代がこちらを見る。
手に持っていた本を見て苦笑いを浮かべた。


「それは…私が一年の時に拝借しました」

「貸し出した覚えは無い。」

「その本棚にしまってあるのは私の知識です。あぁ、床にある本も…もう…眠り姫も終わりですね」


ふと微笑むと千代はセブルスの手を掴む。



「私が何者か、知りたいんですよね…知ったら貴方は混乱するだけですよ。いや、貴方には理解出来ない。」

見上げた彼女の瞳は濁っていた。
「貴方みたいに優しく無私にはなれません、私は貴方の過去を貴方の今までのすべてを知っています。貴方は…ダンブルドアに助けを求め信じた…でも私は彼に利用される事だけを望んだ。貴方は無垢だ…私は貴方のようにはなれない」








不愉快だと顔を歪めた。
彼女はベッドを下りて体を動かし、ふぅと息を吐く。






「見ていてくれたら良いですよ。ただ、邪魔はしないでください」








ふわりと微笑む彼女に惹かれた。
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