blunder-mark.
□俊敏と鈍さ。
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相変わらず彼女はハリー・ポッターを擁護するが、我輩を責めはしなかった。
冬休み前のクディッチの試合前にドラコが見当たらず探しに出た時だった。
人気の少ない廊下から何か渇いた音と、落ちる様な音が聞こえ静かに見る。
「満点を取れとは言いました、スネイプ教授から素行について連絡がありましたよ。貴女は随分と迷惑をかけているそうですね、何故いい子になれないのですか」
「母様、仕方ない事です。」
「やだぁ、ちょっと千代!血をつけないで頂戴!汚らわしい!」
「す、みません…ミラ様」
「全く貴女は存在自体が恥だといつになれば解るのですか!成績ぐらい良くなくては貴方に価値は無いのですよ?これは貴女の為に言っているんです、解りますね」
「はい…申し訳ありません…奥様…」
「はぁ…まったく…」
座り込み彼女は俯いたまま罵られ罵倒され続けた。
クディッチが始まると姉が言うと母親兄と立ち去る。
「気安く名前を呼ばないでと何度言えば理解出来るのよ!出来損ないが!」
「っいゃ」
「逃げるんじゃないよ、千代、久しぶりに遊びましょう?父様がくれた私のお人形なんだから…黙って座って居れば可愛がってあげるのに」
手を踏まれても悲鳴を上げない。
髪の毛を捕まれ見上げる。
「私が欲しがったから貴女は生きていられるのよ?ねぇ、新しいプーリップより貴女のが良いわ」
「ね、ぇさま…お、ゆ、るし…くださ、い」
「嫌よ、許されたいならもっと母様を怒らせて私の元に帰りなさい」
「っ…ふ、ぁ」
「千代…私の可愛いお人形さん……冬休みまでに決めなさい。選択肢等お前には無いと理解しなさい、千代。汚らわしい娼婦の娘が魔女に等なれるわけはないのよ」
試合が始まると、「大変!」とすたすたと何事も無かったように立ち去る。
千代は手を抑える。
あの姉が呪いをかけたのだろう。
泣きじゃくる声。
ふらりと立ち上がり壁によっ掛かり座り込む。
「つ、かれ、た……な」
クスクス笑っていた。
「千代」
「校長せ、んせ…やっぱりだめ見たいです…私には選択肢なんか…ありませんでした」
「……セブルスの件は許して欲しい…」
「スネイプ先生は…正しいし…とても優しいです……だから…尊敬しています」
「…千代、戻る必要はない」
「私にはそれが正解に思えます…だって…姉様は…私の目の前で母様を殺して見せた方ですよ?…私の幸せはあの方のお人形として生きる事…やっぱりなれないわ…」
「…気をしっかりするのじゃ」
「してるわ!魔女にさせないために…呪いをかけた……私は勉強をしないと奥様に怒られてしまう、魔法を使えば使うだけ身体から血が抜けて…でも、勉強しなきゃ魔女にはなれなくて…」
「そうじゃな…あぁ、よく頑張った…」
ダンブルドアに抱き着き泣きじゃくる。
「姉様のお人形で居たら…私っ私きっとそれが、幸せなんだわ」
怒られないように、叩かれないように、機嫌を損ねない様に四六時中気をはって観察して…
「セブルス、千代を任せる。手の怪我を診てやってくれるな」
「…はい」
「呪いの方は首の後ろじゃ」
「私に解けと、申すのですか」
「このままでは…人格が壊れてしまいかねない…彼女は才能がある。」
「……ですが」
「セブルス」
千代が泣き叫ぶ。
過呼吸になる程。
血を吐き、悲惨な状況。
「ご、めんなさい!ゆる、して、すみ、ませ、んすみ、ませ、ん…」
壊れたように繰り返し涙を落とす。
ダンブルドアにしがみつき、光りを失った、様に涙を浮かべて怯えていた。