blunder-mark.

□俊敏と鈍さ。
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「だい、じょうぶだから…騒がないで下さい…」

『プリンセス…あぁ、すぐにマダムを』

「大丈夫だと言っているじゃないですか!」

『っ!』

「お願いだから…呼ばないで…」

『だけどねぇ…』

「大丈夫よ!」



『おぉ、スネイプ先生』




振り返った彼女の髪の毛の先は赤くなっていた。





「Ms.神村……どういう事でしょうかな」

「っ…あ、……や、だ…どう、しよ」




赤い唇は紅を塗ったよう。

タオルでぐしりと口や床を拭くと、髪の毛もそれで拭く。




「ちょ、ちょっと絵の具を零して」


「それで…スリザリンのプリンセスともあろうお人が、我輩が納得するとお思いではあるまい。」





少しふて腐れてたように立ち上がり、教材を拾う。



「先程、ドラコに言っておくと言ったな、何故ドラコだと?」


びくりと肩を揺らす。


「先生がドラコがって」

「言った覚えはありませんな」


「っ、そ、それ」


「普通なら、マダムポンフリーに預けるべきお前をわざわざ我輩に預けたのは、知っていたのだろう?」


「な、にを」


「お前の不調を」


「私は健常者です!失礼な!ドラコが心配性だから貴方に突っ掛かって私があの場に居たと考えるのが普通でしょう!ドラコがきっと無礼をし、私もまた、お世話になる結果になったのはドラコが先生に私を押し付けたからだと…っ!」



神村を抱き上げ、部屋に引き返す。
暴れる彼女を睨むと涙を浮かべていた。珍しく、慌てる表情困惑したように睨む弱々しい瞳。

ソファーに座らせ、バスタオルを渡す。


口元を抑えたままだった。

紅茶をいれて渡せば俯く。

口を最初に開けば彼女は喋らないだろう。

そう思い見つめると、重々しく唇を揺らす。





「魔法を一定の量を使うと…こうして吐血して目眩や頭痛がするんです。」

「ほぅ」

「一定の量は自分でもよくわかりません、でも…睡眠によって体力が回復すると同時にリセットされるみたいで…最近は寝不足だったので…どうやらキャパオーバーしたみたいです……マダムポンフリーに知られると面倒になるので…隠していたんです」


「何故、ドラコが知っている」


「…ドラコと二年の初めに大喧嘩したことがありまして…私が血を吐いた時……マダムポンフリーを呼ばれない為に説明しました」




呪いに違いない。
そう核心していた。

眉間を寄せ彼女を見る。


「もう、戻って宜しいでしょうか…私勉強が…」




彼女の事は調べていた。
現在の妻の子供ではなく妾の子だと言う事。
上に兄、姉が一人ずつ。
千代の母親は他界。
彼女が恵まれた環境ではなかった。
それを言えばハリ・ポッターも同じだった。




「常々、我輩に"気に入らない"と言う理由もお聞かせ願えますかな」


目を見開き下唇を噛み締める。



「先生は……ハリ・ポッターが可愛いように私は見えます。目をかけてもらい…なのに彼は貴方を馬鹿になさる。"気に入らない"ですよ。貴方はスリザリンの寮監なのに…グリフィンドールの英雄様を案じていらっしゃる。」


「……」


「先生の邪魔にならないように、先生の為には…あんな態度ではいけませんよね」


「待て、何故我輩の為になる」


「先生…私…学年首席ですよ。家でやることが無くてお父様やお母様の卒業アルバムは隅から隅まで見ています。」


「!」


「学校に来てからも…図書館の本は読み尽くしました……禁読はまだですが…」



俯きぎゅっとタオルを掴む。
顔を上げ微笑む。













「ハリ・ポッターには私はどう接したら貴方の邪魔にならないですか、せんせ」















涙を零しながら言う。







「教えてください、せんせえ」















察しが良い娘だ。
我輩の態度、言動で何かを叱咤に違いない。
それはおそらく"正しい"自己防衛本能に似たその洞察力。


また咳込み口元をタオルで押さえ込む。
部屋を出て廊下に走り、何かがあふれ出る水音。



駆け付けると、座り込み制服を汚して長いブロンドが血に滴る。





「ごめ、んなさい…よ、ごして…ごめん、なさ…い」


床や壁を先に拭く。




それで、また髪や口を拭く。












「いま、片します…すぐに―…すみません」







俯く彼女は何故か怯えていた。

普通とは彼女は少し違っていた。
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