blunder-mark.
□俊敏と鈍さ。
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「あ、あの神村さん…」
「なんでしょう」
授業が終わるとすたすたと千代の前に立つ。グリフィンドール三人組。
「オイオイ、ウチの姫様を口説くのかいポッター」
すかさずドラコが口を挟む。
が千代がドラコの胸倉を掴み小さな声で耳元で呟く。
「今すぐ黙れデコ。機嫌悪いって言わなかったかしら。毟られたいのかな…」
「…お前が具合悪そうだから」
「気を使ってくれるなら、上手くやって。はげ。」
そっとネクタイを直し帰るように顎でさすとドラコはお供を引き連れ去っていく。
三人組は首を傾げていた。
「毎回…ありがとう、神村さん、ごめんね、僕のせいで」
千代は眉間を寄せた。
スネイプも手を止め顔を上げ千代を見つめる。
「貴方は…何を勘違いなさっているの?私が貴方のせいで…何ですって?」
「え?だって、君が」
苦虫をかみつぶした様な表情をする。ぎゅっと勉強道具を抱える千代。
「君、私ね。貴女、お前や手前、貴様やらはどの地位の人から言われても気にしないわ。でも、"君"って言うのは大嫌い。」
口を抑えるロンとハリー。
「それに、私は別に貴方を庇った訳でも、点を欲しかった訳でも、貴方に好意があるわけでもありませんよ。ましてや偽善者のつもりもありません」
「ならなんで、いつもいつも」
「私が信じる私の正義があるだけです。」
「…」
「では、よろしくて?罰則の羊皮紙が今か今かとお待ちしているんで」
「……流石スリザリンのプリンセス」
千代が何を思ったのかロンの頭に手を伸ばす。
髪の毛を撫でる。
「赤毛……綺麗ね」
「え…」
「私も赤毛になりたかったわ…」
憂いげに呟き教室を出る。
待ち受けたドラコを見て厭味を言おうと口を開きぶっ倒れたらしい。
毎回毎回、罰則で千代は借り出されていた。
よくもまぁ、それで学年首席でいれる訳だとドラコは感心していたが、所詮同じ女だ。
ドラコは医務室に向かおうとはせず、スネイプに渡す。
"貴方の所為"
だと。
スネイプは至極気に入らなかった。
スリザリンのプリンセス。
名の通り美しい容姿、誰にも下手に出ない、誰にも遜らない、だが確かな正義、そして聡明で豊かな知識。
過労で倒れたのは確かに自分の責任だろう。
ため息をつき、ソファーに眠る少女を見つめる。
小さな唸り声を上げ起き上がる。
「パンジー!何故起こして……あ、れ?」
「ようやくお目覚めですかな。Ms.神村」
「せん、せ」
ほうけた顔をして、辺りを見渡し額を抑える。
「すみませんが今、何時でしょうか」
「…深夜2時を回ったところですな」
「っ!な、んですって」
起き上がり慌てて教科書を鞄に詰め込み、入口に立ち微笑む。
「ご迷惑をおかけしました。ドラコにはもう二度このようなことをしないように言い付けておきます。失礼します。先生。おやすみなさい…」
彼女は頭を下げ部屋を後にする。
何故ドラコだと?
彼女は察しが良すぎる気がした。
彼女の言葉は当たらずとも遠からずの言葉ばかり。むしろ今回は的を射た意見だった。
彼女が必ずドラコに我輩を「気に入らない」と言うのは知っていた。嫌われているのかと思えば、よく授業を聞き、成績も頗る良い。
後を追うように私室を出る。
スリザリン寮に向かい歩くと、むせ返る声と画達の騒がしい声が聞こえた。
怪しみ急ぎ足で向かい明かりを向ける。
座り込んでいたのは別れたばかりの少女だった。