古本屋と白い地下室。
□彼女という人。
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夢を見た。
三人同じ夢だった。
それは二年前の記憶だ。
此処には"魔女"が居た。
全ての能力を操ると言われていた。実際は知らない。
彼女が能力を使うとこを殆ど見ていないから。
何故か彼女が傍に居ると周りを気にしなく安心出来た。
だから、彼女が大好きだった。
けど、周りは彼女を"魔女"と呼んだ。
局長と対等の地域でありながら、彼女は地下室が部屋。バベルの地下は広く白く何もなかった。
ベッドとお風呂が仕切られてあとは机に数札の本と、台所に冷蔵庫。小さなチェストがあるぐらいで何もなかった。
『薫、葵、紫穂、いっぱいいっぱい書いてほしいの、ねぇお願い出来る?』
白いキャンパスに四人で絵の具やペンキをぶちまけて足跡をつけたり、能力で遊んだり…いっぱい残した。毎日毎日通って話したり遊んだり。
いつの間にかたまり場のようになって、任務が終わると帰りたいと思えたのはあの場所だった。
『ねぇ、薫…貴女は番いになってね』
『つがい?なぁにそれ?』
『ふふっ、難しかったわね…そうね…特別な接着剤かしら』
そう言って笑っていた。
まだ、解らない。
でも…千代が焼くケーキやクッキーの味を忘れられないし、千代の香りや体温を忘れたくなかった。
二年前千代は、人間でもエスパーでもなくなった。
彼女は秩序の護り神になったと局長は言っていた。
意味は今でもわからない。
最後に会った日、千代は抱きしめてこう言った。
『薫、貴女は愛されてるのよ』
そう言って泣いていた。
『わ、わたしは千代と離れたくない!』
『私も…薫と葵と紫穂と離れたくないっ……ごめんね…私はもう意志をもてないのよ』
『いし?なん、で?』
『私は…魔女だからよ』
苦笑いして千代は額にキスをしてくれた。
震えていた身体を忘れられない。
閉鎖された地下室。
それから会う事は無かった。