涙が止まらない。

□日本酒から。
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セブルスは小一時間固まって思想していた。















事の始まりは昨夜だろう。
シリウスがベラトリックにさっさと帰り家の手伝いを命じ無視したところ大量の手紙と梟に半狂乱しながら「殺してやる」と呟き帰宅を決めて、お茶会をしていた桜子がお別れ会と言い出し、オヤジ達には飲む良い名目の宴会が開かれていた。
ベラトリックが帰国すると決まり千代は泣き明かし、しがみついている姿にまた周りが泣き出し、ベラは苦笑いしながらセブルスに彼女を任せる事にした。
お花見の一件以来彼女は少しずつ変わっていた。
自分が居てはややこしくするという自覚もあり、癪だが、シリウスを口実に離れてみることにした。だが、当たり前に不安もある。
18年妻に無関心で、地下に閉じ込めていた男がたった数ヶ月で変われる等信じる程彼女は単純ではなかった。
千代の態度は八割は生徒のようだが二割は異性として見ていた。ベラにしてみれば二割は大きく検討の価値はあった。
葛藤しながらも、二人の時間の無さにも要因はあった筈だと思い、離れることを決めた訳だが、千代は知ってか知らずか嫌がっていた。だが、魔法省の影響が少ない日本に長く滞在すると疑われかねないと言われ渋々納得していた。
だが、理解と心情は別物で、子供のように最後までへばり付いていて、何だかんだでベラトリックも寂しく感じてしまっていた。


帰宅すると、シリウスに恨みつらみ悪口を言われ腹が立ったが手紙の一件の怨みを告げ、くだらないと彼女は冷めていた。

そんな彼女の様子にシリウスも首を傾げ皮肉混じりに「拾い食いでもして頭が可笑しくなった」と笑う彼に「お前だろう?」と返すベラにシリウスは見間違いだったと再び喚いていたが、ベラトリックは構う程暇ではなかった。
帰ったからにはダンブルドアに確かめたい事もあり、ポッター夫婦にもあった。
何より、千代の能力が蘇生だけとは思えない彼女は不意に喚く従兄弟に問い掛けた。



「ねぇ千代の、神村家が得意分野はなんだった?」

「はぁ?お前があんな女に執着する理由がさっぱりわからないな」

助けたのはその"あんな女"だろうと、プライドの高さならセブルスを悪く言えないだろうと呆れていた。男はこうも愚かな生き物しか居ないのか、と。


「聞いてる事に答えな」

「勘違いするな!お前は居候だ主にそんな口を―…「なんだ、知らないなら知らないと良いなよ。めんどくさい男だ」

「知ってる!神村家は代々闇の魔術を得意としている。表向きはな、だが、裏では禁忌の蘇生、暗殺、そして―…時間を操る魔術に長けていた。」




それからのシリウスの厭味悪口は聞こえなかった。

時間を操る魔術?

恐らくダンブルドアの呪いと何かが混じりあの姿を保っているのだとは思った。
呪いは恐らく強力な幻術。
だが、筋肉がついたり、重い荷物を持ったり、勉強を教えたりと、知力も体力も衰えていない。


「千代以外の家族は殺されちまったんだろう?けど、ダンブルドアより強い彼等を誰が?」


「簡単だ、権力だ。ダンブルドアが制定した法律違反として、魔法省により一族は死刑にあった」


「なら千代は何故生き延びれたんだい、おかしいだろう?あのお方がまだ存在しない時なんだろう?それは」


何を恐怖とし一族を殺す法律を作ったのか、神村家と交友が無かったとは考え難い。
何故なら千代の能力があのお方に行くのを紛れもなくダンブルドアは恐れていたのだから。
千代が幼い頃に亡くなったのに明確に能力を理解し把握し使い熟せたなんて考えられない、ならダンブルドアが知っていて彼女に教えたという方が納得出来る。だが、疑問は何故、彼女に教えたのか。神村家を恐れていた上、術を解明したのなら自分で使えばいい、何故千代が必要で教えたのか、生かしたのか。



シリウスは眉間を寄せた。


「確かに、蘇生を禁忌の術としているが、実際使えるのは神村家だけだった。死者への冒涜だとダンブルドアが言ったらしいがな。だが、神村家だけが使えたのは神村の血筋のより濃い奴らだけだったらしい。分家にまでなると、蟻一匹が精々、こんな大量の蘇生の術には二つ必要ならしい」


椅子に腰掛け指を立てる。


「一つ。時間の回帰。腐敗や骨に魂をつけるなんて粗末な術じゃない。回帰させ、死ぬ前の正常な姿に戻す。」


ベラトリックは息を呑んだ。


「二つ目。魂の添付。死体に貼付ける訳じゃない、肉体が生きた状態にし、魂を入れる。そして、これが最大の不可解だ」



三つ指を立てるシリウスを睨みつけた。



「三つ目。記憶だ。本来記憶は体の記憶を言う、だが、神村家はそれじゃぁダメだと言う。生きてる間と死んでいた時間のタイムラグ、肉体は死んでいたが、魂は生きていた。生きていたという表現が適切かは解らないが、魂が記憶した記憶も肉体に記憶としなくてはいけなかった。それが出来なきゃ魂が本来の肉体を探せず可笑しくなると神村は考え、魂から肉体の記憶を引っ張り肉体に魂の記憶と魂であった時の記憶を植え付けた。現に俺達には"死んでいた"記憶ははっきり残っているだろう?」



ベラは鳥肌に腕を数回摩った。



「死体に魂を植え付けるなんてのは簡単だだが、だが、魂は本来の肉体かなんて解らない。肉体に正しい魂を乗せ蘇らせる事が出来るのは神村家だけだった。それが時間と蘇生、記憶を使う奴らだけの術だ」



手の平を見た。
ぎゅっと握る。


「魂の記憶、肉体の記憶が間違えたら、そりゃ拒絶反応を起こす。だから神村家は最後の魂の記憶を引っ張り正しい肉体に貼付ける事を重要視したんだ」





「なら反動は無いのかい?」




シリウス近くにあった水を飲み干し忌ま忌ましげに吐き捨てた。




「ダンブルドアが…かけた呪いのせいだ!!神村家がそれを武器に軍隊を作らなかった理由が解るか?対価は"時間"だった、奴等は術を使うと時間を奪われ、一人蘇らせる度に一年二年、白紙の時間があった。それは周りも自分も誰も知らずに老け、過ぎ、衰える。だから、必要以上の力を使わなかった。ダンブルドアがかけた呪いに神村家が恐らく千代にかけた呪いが混ざり、彼女は老いない、時間を奪われなく蘇生出来る身体になったんだ」



「はぁ?幼子だったんだろう?んな餓鬼になにを…」


「知るか、だが。千代は神村家の直系だ。産まれた時、以前から何からの術をかけられていたとしても不思議じゃない、狂った家だ。」



「もし、アタシやお前が死んだら―…」


「二度目は無い。神村家は冒涜だと言われたが一部ではこう言われていた「死んでみて命の大切さを知った」ってな。」


ベラトリックは唾を呑んだ。
自分もそう感じていたから。


「千代が殺されなかった理由は恐らくダンブルドアが存在を知り隠していたに間違え無い。」



事実だろう事に震えが止まらなかった。重過ぎる話しを千代が知ってるのなら、ダンブルドアがその力を固持したいと思うのは当然だ。
恐らく少なくとも生かした理由はそうだったのだろうから。



パタリとベットに倒れ、息を吐き出す。




「セブルスの奴が仮にダンブルドアの腹心だったからとは言え、監視に結婚させたのは…例え千代がセブルスの奴を殺してもダンブルドアには想定内だったと?だから千代はアイツを死なせなかったんだ!セブルスの奴が馬鹿正直にダンブルドアを信じたままで居られるように?」



シリウスはベラトリックの独り言に顎が外れそうな勢いで口を開けた。
ベラは枕をたたき付けた。



「違うか…千代は…ダンブルドアを護ったんだよ…結果は」





悔しさに涙が出て枕を抱きしめた。嫌いながら愛しているなんて壊れてしまうよ、そんなもん。と思いながら。
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