Hermit短編

□ふたりの時間
1ページ/3ページ

ここに来ていったいどれくらいの時間が経ったのだろうと、机の上の手帳をめくって考える。
昼も夜もないこの場所では時の流れを感じはしても、その長短を知る術がない。
唯一時を告げるものである校庭の時計塔も、その針はまるで止まっているかのようで、刻々と時を刻みはしない。

それでも、既にかなりの時間をここで過ごしているのは間違いなかった。何枚ものページを使って書き付けた迷宮の地図がそれを物語っている。

一瞬が永遠に近いほど引き延ばされているこの場所で「やそがみこうこう」はずっと終わらない文化祭を続けている。
そしてその華やかさと裏表になるものもまた、隠し持っていた。
それは、人の心の闇がシャドウとなって巣くう迷宮。
校内に少なくとも四つあると目されているそれらに、元の世界に帰る手がかりがあると見て、私たちはその探索を続けている。

すでに一つは踏破し、二つ目もまもなく最深部にたどり着こうとしている。
それでもまだ道半ば。
たくさんの仲間たちのおかげで楽しく頑張れてはいるけれど、そろそろちょっと普通の生活が恋しいと思う。

(自分のベッドで寝たいなあ。ツネさんにも会いたいし、それから……)

出店の資材の入った段ボールが雑然と積まれた空き教室の窓際で、ひとりぼんやりと外を眺めながら心の声を聞いていると、後ろのドアが前触れなくガラリと開いた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ