往復書簡
□往復書簡
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宮本 美織 様
きっと驚かせていると思います、この手紙。
直接渡さなくてごめん。そうするにはどうしても勇気が足りなくて。
稲羽で、だいぶ鍛えたはずだったんだけど。
*
お弁当、ごちそうさまでした。
すごく美味しかった。
と、食べる前に書いています。
でも間違いないはずなんだ。宮本さんが作ってくれたものが、美味しくないはずがない。
腕前を信じてるっていうのはもちろんだけど、それ以上にもっと大きな理由があります。
それは、俺が、宮本さんを好きだから。
突然ごめん。でも言わずにいられないんだ。
こんなに早く伝えるつもりじゃなかった。
けど、顔を見た瞬間、無理だって分かった。黙っていることなんてとても出来ないって。
だから告白します。
宮本美織さん、俺は、あなたが好きです。
待ち合わせのポストの前で「おかえり」って言ってくれた時、本当に「帰ってきた」って思った。
実家に着いた時よりも、親と顔を合わせたときよりも、ずっとずっと心の底から。
笑った顔があんまり眩しくて、まるで光そのものみたいだった。
稲羽に越したことも、一年で戻ることも何もかも不安だった時に、光を届けてくれた、あの手紙みたいに。
待っていてくれてありがとう。
迎えてくれてありがとう。
それだけで俺は幸せで、これ以上を望むのはとんでもないわがままなのかも知れない。
気になる人がいると言っていた君を、困らせるだけかも知れない。
でももし叶うなら、これからもずっと俺の「帰る場所」でいて欲しい。
そう、思っています。
返事はいつでもかまいません。
なかったことにしてくれてもいい。
それでも俺は、あなたが好きです。
月森孝介