往復書簡

□往復書簡
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宮本 美織 様

菜々子の意識が戻ったよ!!!
今朝連絡をもらって、今ちょうど面会から帰ってきたところです。ポストに手紙を見つけて嬉しかった。いい報告をこうやって、すぐに伝えることができるから。

菜々子、まだ話すのは辛いみたいで、長く一緒にいることはできなかったけど、目を開けて、俺を見て、笑ってくれて、手も握り返してくれた。
お医者さんは、「まだ安心はできない」なんて言っていたけど、必ず良くなるよ。俺はそう信じてる。

手紙、いろいろと気を遣ってくれてありがとう。
菜々子と叔父のことは、これで少し安心できたかなと思う。
それから昨日、こちらは夜まで雨だったんだけど、マヨナカテレビには何も映りませんでした。今度こそ本当に、終わらせることができたんだと思う。

ただ、町の様子はちょっと、なんとも言えない感じです。霧は日増しに濃くなっていくし、今日はついに一日中晴れないままだった。
体だけじゃなく心の調子を崩す人も出てきていて、見通しがきかない中で、あることないこと囁かれるような、そんな状況になってます。

なので、今回もまた、宮本さんの日常にとても癒やされました。

おでん、いいね、温かくて。菜々子と叔父が帰ってきたら、うちでもやりたい。
あと、肉丼については宮本さんのお母さんの言う通りです。あれを出されて喜ばない男はいない。
バーコードの色は種明かしを後回しにしてくれてありがとう。またひとつ来年帰る楽しみが増えました。
さざんか、読めたよ。けど、花のイメージが椿とごっちゃになってる。あとで菜々子の図鑑で調べます。

それから、進路のこと。
俺も進学するつもりではいるけど、それ以上のことはまだ何も考えていないです。
でも焦りや不安はないかな。この半年の自分の変化を思うと、今決めたところで、また半年後同じ気持ちでいるとも限らないって思うし。
もちろん、ずっと変わらないものだって、あるだろうけど。

とにかく、今は稲羽でやるべきことをやって、その先のことはそっちに帰ってから考えるつもりでいます。
宮本さんも焦らなくていいんじゃないかな。来年一緒に考えよう。手伝うよ。

こちらは模試の予定はないけど、来週一週間が期末テストです。進級がかかっているので、先生たちが口を揃えて頑張れ頑張れと言ってます。
俺は八高では進級しないから…って気楽にしてたけど、もしかして点が悪くて留年になったら帰れなくなる?
まさかね。

月森孝介
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