往復書簡

□往復書簡
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宮本 美織 様

一週間以上空いたね。ごめん。
実はこの土日で文化祭でした。試験が終わってからクラスの出し物を決めたから慌ただしくて。

いま朝五時です。
地元の老舗旅館にいます。
書き物するにはギリギリの薄明かり。
いつの間にか、日の出はもうこんなに遅いんだね。

障子の向こうで、クマの寝相に蹴散らされながら陽介と完二(後輩)が寝てます。
俺はこういうとこに来ると早起きで。あと、昨日のうちに備え付けの便せんを見つけたから、これで手紙を書きたくて。

印刷されてる通り「天城屋旅館」です。
稲羽で一番の名所。せっかく来てるのに、諸事情あって評判の温泉にまだ入れておらず。

仲間にここの一人娘がいて(その名も天城)、内輪の打ち上げをしようって誘ってくれたんだ。
文化祭も全員総出で頑張ったからね。
女子の方には菜々子も一緒。

その辺の話は後でするとして、とりあえず言いにくいけど言いたいことが。
俺は「クマ風」にしたためてみようかな。

ちゅーわけで、今さらだけどテストお疲れクマー。
ケーサン上手にできたクマ?得意分野がハッキリしてるのはいいことだと思うクマよ。
ちなみに孝介は、ななななんと!今回学年トップを取ったクマ!
驚いたクマー?誉めてもいいクマよー?

おお、書けた。
簡単に図々しくなれるな、これ。

まぁそういう結果でした。
八高って、成績順位を貼り出すんだよ。今どき珍しいよね。

で、文化祭。
クラスの出し物はなんと「合コン喫茶」。誰の案かはあえて言わない。
成功か失敗かっていったら失敗だったんだけど、個人的には面白かったかな。

ちょうど俺たちが手紙でやり取りしてたみたいな、ヤブから棒な質問を投げ合って、気まずくなったり深読みしたり。
恋は「知りたい」から始まるんだなって思った。
いや、恋愛に限らず何でもそうかも。

宮本さんが俺に興味を持ってくれてるのは嬉しい。
今度は何を聞かれても、どぎまぎせずにちゃんと答えるよ。恋愛相談とかは、あまり力になれないかもだけど。
さて、気になる彼は、見ていたいだけの人なのか、知りたい人なのか…。

大事な秘密を打ち明けてくれてありがとう。
だから俺もひとつ、白状しようと思う。

というか、隠したとしてもまたどこからか知られちゃうような気がするんだよね…。
なので先手必勝。

文化祭で女装コンテストに出ました。

他薦でね。
出来は悪くなかったと思うよ。自分では。
またやりたいとは思わないけど。
ちなみに優勝は隣でシーツをぐちゃぐちゃにして寝ている金髪碧眼の美少年でした。あの仕上がりは反則。

あ、封筒をいくらひっくり返しても写真は出てこないので、あしからず。

そういえば、図書室コンピューター化の話、俺去年司書の先生にちらっと聞いたよ。
かなり唐突に話を振られたから良く覚えてる。実現するんだね。

さて、さっきから陽介がうなされてるので、ちょっと起こして風呂に誘ってみようと思う。
この時間は間違いなく、露天が男湯なはず。
行ってきます!

あ、そうだ、ハッピーハロウィン!
返事をくれなきゃイタズラするぞー。

月森 孝介
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