往復書簡
□往復書簡
30ページ/53ページ
宮本 美織 様
委員長、似合ってる。すごく分かる。
言われてみれば俺にもあったよ、その予感。
やっぱり、宮本さんは図書室にいるのが一番しっくりくるね。久しぶりに懐かしいイメージが湧いて、なんだか嬉しい。
最近、本は読んでますか?
生徒会か。
転校族の俺には許されない世界だけど、学校との受け身じゃない関わりって面白そうだね。
きっと当選するだろうけど、手を抜かず頑張って。
応援してる。
あ、来年戻ったら図書委員に立候補しようかな。三年生でも前期はあったよね、委員会。
男勝りさんからの月光館情報も、ありがとう。
江戸川先生、保健とは思わなかった…。
同じイザナギザナミでも国産み神産みならまだつながる気がするけど、黄泉下りの話だったからなぁ。
個人的には興味深い講義だったし、他所では聞けないようなものって意味では、良い経験でした。
それにしても色々とすごい学校だった。
部活らしい人たち、確かに見たよ。どこも設備が整っててやりがいありそうだったな。
仲間たちは都会の学校だからって思ったみたいだけど、そうじゃないよね…。
「業界人のりせ」は、お察しの通り、あの「りせちー」です。
もっとも今は休業中だから、普通の女の子で、八高生で、後輩で。みんなとぞろぞろポロニアンモールも歩くし、当たり前にしてると意外なほど気付かれない。
手紙に書いてくれた後夜祭の話をしたら、複雑そうな、でも嬉しそうな反応してた。
それから探偵王子。
エスカペイドでは、彼、とも一緒だった。
マヨナカテレビのこととかで以前から話す機会はあったんだけど、二学期になって転校してきたときには驚いた。しかもこちらも後輩。
あ、今さらだけど、修学旅行はなんと一・二年合同でした。生徒数の減少が理由だとかなんとか。
ちなみに八高は一学年三クラス。そっちは五クラスだったっけ。
で、そこまで事件に固執する彼を、俺もはじめは、少し度が過ぎてると思ってた。
もうちょっと肩の力を抜いた方が生きやすいんじゃないかって。はは。自分に少し余裕が出てきたからって、それこそ上から目線だったな。
今はそうは思ってない。
彼は本物の頭脳派で、しかも行動力もあって、自分が何をすべきかを良く分かってる人だった。
脱帽ものだったよ。
今は体調を整えるために休んでるけど、また出てきたらいろいろ話を聞かせてもらいたいと思ってる。
彼が出た番組のこと、宮本さんみたいに受け止めた人がいたって言ったら、きっと喜ぶんじゃないかな。こっちでは肝心の事件の話より、彼のビジュアルとかキャラクターのことばかり話題になってたから。
地元育ちの仲間はね、そういう町の様子を、何か怖がってるみたいだって言うんだ。他人の話にばかり花を咲かせてるって。
俺はただ、稲羽の人はたくましいとしか思わなかったから驚いた。人それぞれ、見方はこんなにも違う。
探偵王子のように、あり得ない可能性も、柔軟に取り入れるような考え方をしたいな。今より、もっと。
そうそう、クラスの奴が「王子なんて言われたら俺はキレる!」とか言ってて、心密かに笑ったよ。
なんといってもトマト王子ですから。
俺は気にしないけどなぁ。
こっちも負けずに長い手紙になったね。
風が冷たくて、窓を開けてたらちょっと冷えた。
ペンを持ってた手だけあったかいです。
今度はもう少し秋らしい便せんで送ります。
ところで、猫は好き?
月森 孝介