往復書簡

□往復書簡
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宮本 美織 様

終わったら返事を書くと決めて、見ないフリしてた宿題を一気に片付けました。今回も効果てきめん。
手紙ありがとう。月森です。

そちらもバイトお疲れ様でした。
あふれるほどの思い出が時間に漂白された後で、どんなことが心に残るのか、楽しみだね。

打ち明け話、嬉しいです。
思えばずっと俺ばっかり聞いてもらってた。
しかも全然掴みどころのない話を。

好きかどうかって、そう思えるかどうか、ただそれだけなんじゃないかな。理屈なしに。
ひと目見ただけで分かってしまうこともあるし、同じ時間を過ごすうちにだんだんと気付くこともある。

言葉を交わさなくても、彼には分かった。けれど、宮本さんは違った。
彼も、もしかしたら伝えることを悩んだかも知れない。それでも、言わずにいられなかった。最後だから、後悔したくないから…。

なんて、俺の方こそ面白がってる?
ごめん、茶化したいわけじゃないんだ。

そういう風に誰かを思えたら、いいね。
まだ全然、俺は自分のことで手一杯で、何も分からずにいるけど、それでも、いつか。

たとえ好意でも、思いがけないボールは避けるしかないから、受け止められなかったのは仕方のないことだと思うよ。あまり気に病まない方がいい。

それから、彼が見ていたよそゆきの宮本さん。
それも宮本さんの一部だから。
だから、「私じゃない」なんて言わないで。認めてあげて欲しい。

自分しか知らない自分がいるように、他人しか知らない自分もいる。そのはざまで俺たちは生きてる。
八十稲羽っていうテーマパークは、俺にそういうことを教えてくれてます。

さて、夕飯にしようかな。
このところ毎日食後に菜々子の宿題見てるんだけど、それも今日あたり終わりそう。
夏休みラスト二日、何して過ごそうか…。

月森 孝介
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