往復書簡

□往復書簡
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宮本 美織 様

おはよう、宮本さん。
良く眠れましたか?

美織姫がおやすみの間に、俺の期末も終わりました。
結果はこれからだけど、まぁ補習になることはないかな。事件も動きがないし、ひとまずは楽しい夏休みを迎えられそうです。

八十神高校って、なんと木造校舎なんですよ。
もちろんクーラーもなし。
勉強するにはボーダーラインの暑さだけど、それでもなんとかなるんだから、こちらの夏はまだ過ごしやすいんだろうね。都会と違って熱に逃げ場がある感じがします。

建物のレトロさの裏返しみたいに、八高の制服は本当にハイカラです。届いた時は俺もビックリしました。
校則もあまりきつくないので、みんな思い思いに着こなしてます。前ボタンはいっさい閉めないのが、俺のスタイルです。
ちなみに、テレビでくり返し流れてる映像は春先のものですね。夏服の今は、詰襟じゃなくてただの白いシャツを着てます。
俺は、撮られたことないんじゃないかなぁ。

モロキン(というのが亡くなった先生のあだ名でした)のスーツが洒落てるっていうのは、意外な着眼点で面白かったです。
近くにいると、かえって見えないことってありますね。とにかく服装なんて気にならないくらい、いろいろ目立つ人だったから…。
彼の怒鳴り声が聞こえない学校は、穏やかだけど、ちょっとだけ物足りなくもあります。

後輩の家は染物屋だし、確かに、織物とか盛んでもよさそうな土地柄です。
もっとも、名物はビフテキなんだけど。
※そして稲羽に牛はいない。(!)

バイト大変?
俺もこの間、花村の手伝いで初めて接客バイトをしました。内職や裏方仕事とは、また全然違うね。
花村が、常に感じ良く臨機応変にお客さんの対応をしたり、従業員同士のもめごとで走り回ったりしてるのを、心底すごいと思って見てました。
きっといろんなことあると思うけど、お盆に向けて頑張って!

ところで。

同封したメガネ型のしおりですが、それ、俺たちチームの"仲間の証"です。
宮本さんにも持っていて欲しくて、勝手に送ります。

実際はメガネそのものをそれぞれ用意してるんだけど、俺だけの秘密のメンバーということで、少し変えてみました。色と形は、俺のと同じです。
いつもメガネを作ってくれる仲間に頼んで、まったいらのペラペラだけど、レンズもちゃんと"本物"の素材が使われてます。

俺と仲間たちのしてること、信じてくれてありがとう。
いつか、夢物語としか思えないようなことまで、本当のこと全部、話せたらいいな。

月森孝介
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