往復書簡

□往復書簡
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月森孝介さま

トマト、ごちそうさまでした。
おいしかったです。

届いたその日に、さっそくサラダにしていただきました。身がつまって味が濃くて、以前ちょっと野菜作りにハマったことのある母は、初めてでこれはすごいと感心しきりでした。

なんか、家庭菜園する男子高校生っていうのが、父と母にうけてしまって、月森くんのことを「トマト王子」なんて言い出してます。
文通してることも、初めてちゃんと話したんだけど、ふたりともずいぶん勝手に盛り上がってくれて、なんだか少し、嫌な気持ち。

うちの場合は365日両親そろって家にいるけど、それはそれでなかなかうっとうしいです。ときどき、わーって叫んで逃げ出したくなる。
行く先がないから、部屋に鍵かけてふとんにもぐるんだけど、それさえも、母に「美織の岩戸ごもり」と命名されて軽くあしらわれてます。
こんな家出てってやるー!ってそのたび思うけど、大学もこっちで間に合ってしまうし、いつかの遠い夢です。

それにしても月森くんはすごいですね。

自分のあり方をガラリと変えるって、そうそうできることではないと思います。
高校入学の時、私も少し、違った自分を目指してみたけど、あんまり上手くいきませんでした。
やっぱり無理が出たというか…。
月森くんはそういうことありませんか?

あと、そんなに読書に熱心でないのは、なんとなく気付いてました。借り出ししていくこと、あまりなかったし。
ラブリーンどうでした?私も読んでみたけど、テンポが良くてかわいいね。小学生の頃だったら夢中になったかも。

ファンタジーやフィクションが好きなので、マヨナカテレビの話も、その感覚で受け止めたと思います。
困ったりはしなかったけど、その分月森くんの真剣さを正面からは見ていなかったと思います。ごめんなさい。

何か本当に、大変なことをしてるんですね。
こんな聞き手で良かったら、気がねなく、またお話してください。
危ないことには、くれぐれも気をつけて。

こちらの話を少しすると、先週末の体育祭が雨天順延の挙げ句、今年は中止になりました。二年女子全員参加のダンスがけっこうかわいく仕上がっていたので、少し残念です。
作ったポンポンをまだ捨てがたくて、みんなが机の横に下げてるから、授業中先生が通るたび、あちこちでシャカシャカと音がします。そろそろ怒られそう。

次の楽しみは9日の視聴覚教室かな。
今年は映画を観に行くんだって。

宮本美織


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