往復書簡
□往復書簡
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月森孝介さま
こんばんは。
私も、雨の零時を待ちながら、これを書いています。
マヨナカテレビ、初めて聞きました。
都市伝説とか噂関係の本に当たってみたけど、似たものもないですね。テレビにまつわる話は、だいたいが放送終了後のもっと深い時間を舞台にしてました。
機械に詳しい先輩にも何とは言わずに聞いてみたけど、ネットにつながっているならまだしも、消えているただのテレビを電源から操作して電波までジャックするというのは、いろいろあり得ないそうです。
それでも稲羽では何かが映っているんですよね?
普通じゃない技術を使ってまで何かしてやろうという人がいて、月森くんがそれを相手取ろうとしているのなら、ちょっと心配です。怖いなと思います。
事件も、あったわけですし。
危ないことではないんですよね?
菜々子ちゃんを悲しませるようなことは、しちゃダメですよ。お兄ちゃん。
ところで!
この週末、こちらはあわや真夏日というほどの暑さでした。
ちょっと気が早いように感じた月森くんのスイカの封筒も、目になじんで、なんだか美味しそうに見えたくらい。
試験明けで夏服移行前でエアコンもつかない金曜日、久しぶりのカウンター当番をしながら、閑古鳥の鳴く閲覧席をながめて、あぁと思いました。
そういう日でも、居たよね、わりと。
クラスも違うし話をしたこともなかったけれど、印象深かったから名前を覚えて、手紙も出そうと思ったんでした。
そのあたりが「ご縁」でしょうか。
今年の月森くんだから、それをがっちり掴んでくれたんだと思うと、占い師さん(?)の言う「節目」、私も信じられる気がします。
さて、そろそろ時間なので居間に降りてみようと思います。
(私の部屋にはテレビがないので!)
雨のせいか、今は少し肌寒いです。
宮本美織
追伸:
特別なことは何も起こらず、黒い画面に、自分だけが映り込んでいました。
一生一緒に生きていくのだから、ある意味では運命の人とも言えるかも。