往復書簡
□往復書簡
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宮本 美織 様
だいぶ日がのびましたね。
テスト勉強は順調ですか?
こちらは今週が試験期間で、今日最終日でした。
そちらが終わるまで返事は控えるつもりだったんですが、菜々子(従妹です)に急かされて、これを書いています。
朝晩とポストのチェックをしている彼女は、きれいな封筒に手書きの宛名の宮本さんのことを、もう覚えたみたいです。
「お手紙、書く?」と、レターセットまで用意してくれました。
たぶんこれ、驚かせたと思いますが、そういう事情です。
ご両親と旅行、いいですね。
実はこちらも叔父が旅行を計画してくれていたんですが、結局行けなくなってしまって、ゴールデンウィークに出かけた先は近所のジュネスでした。
落ち込む菜々子と励ます手だてのない俺を、友人たちが一緒に誘い出してくれました。それも二日間。特別な行き先ではなかったけれど、たくさん遊んでもらって楽しかったんだと思います。
俺にとっても嬉しい出来事でした。
お礼のこと、まだ諦めてませんが、ひとまず置いておくことにします。
宮本さんからの手紙も、同じなんです。
カード一枚取り戻したとか、そういうことではなくて、気にかけてもらったことが嬉しかった。
ところで、一年経つ間には、話したいことが山ほどたまってしまいそうです。
なので、もし、迷惑でなかったら、このまま文通を続けてもらえませんか?
もちろん無理にとは言いません。
考えてみてもらえたら嬉しいです。
それでは、テスト頑張ってください。
名前を書き忘れるとか、そういうおっちょこちょいはダメですよ。
月森孝介