Hermit短編

□スリープソング!
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ベッドに寝かせた明妻の体を、エリザベスさんがずいぶん無遠慮にいじくり回している。一応診察だとは言っていたが、たぶんそれっぽいことをやりたいだけなのだろう、手順も何もあったものじゃない。

「これはまた、古典的な眠りの魔法でございますねえええ」

脈を取ると言って、なぜか高く捧げ持っていた明妻の両手をポーンと放り出し、その勢いでキャスター付きの椅子を回転させるエリザベスさん。彼女のセンスによって大幅に改装された保健室の、あれやこれやのレイアウトを器用に避けながら「あーれー」とこちらに滑ってくる。

「古典的?」
「はい」

マーガレットさんにはない奔放さにいまだ戸惑う俺とは違って、理は落ち着いたものだ。平然と聞く彼に答えて、キュッと椅子が止まる。最大限度のコーヒーカップよろしく回っていたのに、エリザベスさんには別段乱れた様子もない。

「おとぎ話の時代のやり口でございます。このような技、とうに失われたものと思っておりましたが、これもまたこの空間のなせる不思議でしょうか」
「解く方法は?」
「それはもちろん『王子様のキス』でございます」

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