往復書簡
□往復書簡
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月森孝介さま
嬉しいお手紙をありがとう!!
菜々子ちゃん、よかった、ほんとうに。私も信じてる。きっとすぐ元気になるよ。
なにかお見舞いをと思ったんだけど、返事も早くしたいし、月森くんのテストもあるしなので、ひとまずは折り紙のお花を用意しました。いよいよ退院というときには本物を贈るからね!って、伝えて下さい。ガーベラの花言葉は、希望です。
夏に捕まった少年とは違う容疑者が浮上したというニュース、こっちでも流れました。
それが最初の頃にさんざん犯人じゃないかって騒がれていた人だったから、びっくりしちゃった。
単純な人間関係だけで犯人扱いされて、違うってなっても訂正もなくて、その報道のされ方に「なんだかなあ」なんて思ってた程度の認識だけど、まさか、お気の毒だと思っていたその人が、本当に犯人だったなんて。
思い込みって怖いと思った。
というより、テレビ越しに流れてくる情報をそのまま鵜呑みにしてる自分が、かな。
推理小説なんかでよく言われるけど、一度疑いの外れた人物に、もう一度目を向けるって難しいことだと思います。
月森くんたちがその難しさとミスリードに負けなかったのは、きっと、ちゃんと自分たちの目で事件を見て、自分たちの頭で考えてるからなんだろうなって、そんなことを思いました。
ので、
私も自分の進路は自分の頭で考えなきゃいけないんだろうなあって思うんだけど、正直月森くんの提案は魅力的!
両親は「美織の好きにしなさい」って言うし(ありがたいことではあるんだけど)、幼なじみの男勝りな彼女は「ぐだぐだ言うな。美織はいつも決めるまでが長いんだ」って取りつく島もないし、クラスのドライな友人たちは「美織は日本文学とかでしょ?」って決めてかかってる。
「一緒に考えよう」って言ってくれた月森くんの優しさに、思いっきり甘えたい気分です…。
ちなみに、模試の結果はまだ返ってきてません。自己採点だと、まあ、いつも通りって感じ。
文系科目は上位寄り、理系科目は地を這ってる。
だから国公立は難しくて、私立文系が現実的なところかなあと思います。でも、大事なのはどこに行けるかじゃなくて、何を学びたいかだよね…。
月森くん、留年の心配なんて必要? 学年一位も取っちゃうくらいなのに。
けど、成績は別としても、いっそそっちで進級するのもありかもね。菜々子ちゃんのそばにいられるし。
私は、ちょっと寂しいけど、もともと待つ身だから少し延びるくらい平気。
それに、もしそうなったらいよいよ会いに行っちゃう。
進路の相談は、手紙とか、メールとか、電話とか? 今は手紙が楽しいけど、こだわらなければ繋がる手段はいろいろあるしね。
そしてそして、こちらは再来週がテスト週間です!
今回はリレー形式だね。
このところたくさんやりとりしてたけど、しばらく手紙はおあずけかなー。
そっちのテスト明けにお手紙もらえたら嬉しいけど、返事は遅くなっちゃうと思うので、無理にとは申しません。
それじゃあ、お互い頑張ろー!(おー!)
宮本美織