Hermit短編

□プリンパ!
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「そりゃーやっちまったなあ、里中!」
「お、面白そうに言うなっつの! 反省してんだから……」

しょげ返って報告した千枝を花村くんが怒らせて、私は少しほっとする。
正直なところ、ツネさんもへそを曲げ過ぎだと思うので、あまり気に病んで欲しくないのだ。

「なるほどな」
すっくと立ち上がった鳴上くんも、ツネさんの頭をひと撫でして千枝に向き合う。
「戦闘中に混乱させられて、キツネの小銭袋をひったくった上に、中身をバラまいたと……」
「はい……」
「とりあえず、これ」
「え、何?」
「仏さまだ。不思議と心が落ち着く」
「く、首からかけるの?」
「アクセサリーだからな」

きっぱりとした態度でぐいぐい押すリーダーに、千枝はたじろぎつつ、手の中で小さな仏像を転がしている。
ためらって当然だ。シュール過ぎる、あんな装備。
ていうか、鳴上くん、絶対面白がってる。

「千枝、そんなに気にしないで」
「でも……」
「ツネさんも、仕方ないことなのは分かってるんだよ。ただ、今日は恐ろしく虫の居所が悪くて――あたっ!」

思わず口をはさめば、毛玉のお方に本意ではないと二の腕を甘噛みされる。
もう今日は気分を直してはくれないのだろうか。ずっとこらえていたため息をこぼしそうになったところで、「ふっふっふー」という不敵な笑い声を聞いた。

「うっし、そんならここらでひとつ、俺がツネきちのヒーローになっちまおうかなー」
自信たっぷりにクナイを回す花村くんに、怪訝な顔を向ける。
「目には目を、歯には歯を。プリンパにはテンタラフー……だぜ!」

お得意のウィンクを、ツネさんとふたり、眉間のしわで受け止めた。
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