薄桜鬼

□藤堂くんと一緒に不治の病にかかる
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私の護衛をしなさい。

もっと素直になれたらいいのに、素直に傍にいてって言えたらいいのに――



「平助」

「ん?」

城の一室で、ずっと刀を見つめている平助を呼ぶ。

「刀など見て、面白いのか?」

「面白いっつーか…落ち着くんだ」

「落ち着く?」

「こうして、大切な物見てっとさ。雛姫にもあるだろ?」

そう問いかけられたが、私には、平助の言っていることが分からなかった。

「大切な物はない…が、落ち着く物はある」

「お、何だよ」

「平助だ」

「え?」

私の言葉に、平助の大きく美しい瞳が開かれた。

「私は、何故か平助を見ていると落ち着くのだ。だがたまに、苦しくなる」

「……雛、」

「どうしてだ?」

私は自分の胸を押さえ、答えを求める。

平助を見ていると落ち着くが、平助に見られると落ち着かないんだ。

胸が苦しくなって、顔が熱くなるんだ。

「病、かもな」

「病だと!平助、どうしてくれる!お前を見て病など…」

「くくっ…かもなって言っただろ?」

「無責任なことを言うな!治るのだろうな?」

「不治の病、かもな」

「ふ、不治!?平助…」

笑いを混じらせる平助を、薄情だとぼやける目で睨むと、そっと頭を撫でられた。

「悪ぃ悪ぃ…お前って、本当姫様らしくねぇよな」

「な…っ」

その言葉も癪に触ったが、平助の屈託ない笑顔に何も言えなくなってしまう。

「大丈夫。俺もかかってるからさ…不治の病」

「何、大丈夫なのか!?」

「あぁ」

何故だ?何故平助は、不治の病にかかっても、そのように笑える?

私は心配になり、もう片方の平助の手を掴んだ。

「平助、死ぬなよ…」

すると、今まで見たこともないくらい輝かしく笑いかけられる。

「死なねぇよ。俺には、護衛しなきゃなんねぇ人がいるからな」

「馬鹿者…そのようなことの為に生きてどうする」

また私は素直に言えない。
ありがとう、と言えない。

体を不治の病に蝕まれる前に、伝えられるだろうか。


私はまだ、この病の名を知らない――




            終

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