薄桜鬼
□さよならの代わりに藤堂くんへ
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「お前らー、見せつけやがって!」
「ったく、ちったぁ場を考えやがれ」
「まぁまぁ土方さん、僻まないで下さい」
「何だと!」
騒ぐ三人を横目に、やれやれと原田さん。
「明日香、寂しくなったらいつでも来いよ」
「そんなこと言われたら、本当に来ちゃうかもしれませんよ…!」
「構わん。快く迎えよう。あんたは、仲間だからな」
仲間――と言われる程、私が彼らと過ごした時間は長くない。
が、それは言わない。
時間なんて、関係ないことを知ったから。
大切なのは、思う気持ち。
仲間になる時間じゃなくて、仲間だと思う気持ち――
愛する時間じゃなくて、愛する気持ち。
だよね、平助?
嬉しくなって彼に目配せすると、とびきり眩しい笑顔で頷いてくれる。
「皆さん、ありがとうございます…!」
泣かないよう、出来るだけ明るく言うと、少し古びた西本願寺が、別れを知らせるようにぎいっと軋む。
「それじゃ」
「達者で暮らせよ」
「はい。今まで、ありがとうございました」
深々と頭を下げ顔を上げた時、最後に見たのはあの笑顔、愛しいあなただった。
「明日香、またな!」
忘れないよ。あなたの温もり
どうか、あなたも忘れないで。
私が、明日香がこの時代にいたってこと、あなたを愛していたってこと。
そして、いつかまた逢おうね。
さよならの代わりに
「またね、平助!」
終