薄桜鬼
□男として頑張る藤堂くん
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「平助はいつまで経っても小せぇな〜」
唐突に新八っつぁんが、そんな嫌みを言ってきた。
「男として背丈は欲しいな」
「俺みたいにデカくなきゃ、女にもモテねぇぜ!」
左之さんも加わってきたため、俺は頭を撫でられる手を振り払った。
「デカくたって、新八っつぁんは全然モテねぇじゃん!」
「何だと!」
「まぁまぁ、新八。本当のことを言われちゃ何も言えねぇよ。それに…平助には明日香がいるしな」
納得出来ないような表情の新八っつぁんだったが、あいつの名前を聞くと、口元が緩んだ。
「あ〜明日香ちゃんな〜。平助と恋仲なんだってな〜?」
「そうだけど…?知ってんなら、新八っつぁんも左之さんも明日香に手出すなよ!」
「手出すって…人聞き悪ぃな」
「そうだ!俺はまだ明日香の尻も触っちゃいねぇよ!」
「まだってなんだよ!絶対やめろよ!」
ぶんぶんと腕を振ると、急に左之さんがそれを掴み、手を凝視してきた。
「な、何だよ、左之さん!」
「平助。手も小さくねぇか」
「そりゃ、左之さんに比べれば小せぇよ」
「そうじゃない。こんなんで、明日香の収まんのか」
「は?」
左之さんの言葉に、開いた口が塞がらない。
嫌な予感しかしないんだけど!
「胸だよ。明日香の胸、収まってんのか?」
「はぁぁ!?」
「そういやそうだな。明日香ちゃん、いい体してんもんな〜!そんなちっこい平助の手じゃ、満足に揉めねぇだろ?」
「なっ…!」
羞恥心と怒りで握った拳が震える。
「ば、馬鹿にすんなよ!ちゃんと収まる!…………………………はず」
同時に二人はずっこけた。
「おいおいおい!はずって何だよはずって!」
「お前だって、明日香と一夜くらいあるんだろ?」
「な、何でそういう話になるんだよ…!」
「平助!明日香ちゃんとどうなんだよ!」
でかい体を乗り出すようにして、二人は俺に詰め寄って来る。
「おじさんには関係ねぇじゃん!」
「いんや!可愛い弟の悩みだ。聞いてやるよ!」
「いや、悩んでねぇし!そもそも、弟じゃねぇし!」
依然として引く様子もないおじさん達。
こうなった新八っつぁんと左之さんはしつこい…………
俺は、心の底から深い深い溜め息を吐き出して
「………まだ、触ったことねぇよ……」
苦渋の一言。
「ななななな何だと!」
「そうだったのか…」
二人は同じ目をしながら、それぞれ俺の肩に手を置いた。
「平助……よく頑張ったな。俺は、お前を誇りに思う」
「平助、そういうのは聞いたもん勝ちだぜ?」
「そうだ!万が一断られても、兄上が慰めてやる」
同情するような、
「五月蝿ぇよ!何なんだよ、二人して!あーもー、言うんじゃなかった!」
そんな眼差しに居たたまれなくなり、俺は二人の手を振り払って部屋を飛び出した。