薄桜鬼

□部屋に連れ込む藤堂くん
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「ったく…酔った左之さんと新ぱっつぁんはどうしようもねぇな…
明日香、大丈夫か?何もされてねぇか?」

「う、うん!いきなりでびっくりしちゃった…ありがとう」

「そりゃするだろ…飢えたあの二人は、不逞浪士よりも怖ぇよ」

「そうだね…」


藤堂君から手を離され、へなへなと座り込んだ私は、入った部屋を見回す。


「ここは…?」

「ん?俺の部屋。ここなら安全だろ?」

「と、藤堂君の!?安全だけど、それってまずいんじゃ…」


悪びれる様子もなくさらりと言う藤堂君に恥ずかしくなってしまった。

だって…部屋には、朝藤堂君が起きたまま畳まれていない布団が置いてあるし…

暫く考えた後、藤堂君もやっと今の状況を理解出来たらしく、頬が赤く染まった。


「あぁ!ま、まずいよな!悪い、俺何も考えてなくて!」

「ううん!違うよ!その…男の人の部屋入るの初めてだから、緊張しちゃって…」


いきなりぎこちなくなってしまいそう言うと、藤堂君がえ!と私を見詰めた。


「初めて…なのか?明日香女っぽいからさ、もう…」


語尾はよく聞こえなかったが、何気なく言われた“女っぽい”に私の胸が鳴った。

さっきとは違うどきどき…


「私…女っぽい、かな…?
原田さんと永倉さんにも言われたんだけど…」

「あの酔っ払いに同感すんのは癪だけど……うん。お前、すげぇ女っぽいよ…」

「あ、ありがとう…藤堂君にそう言われると、嬉しい…」

「………っ」

「藤堂君…?」

「そんな顔するから…っ」

精一杯笑ったのに俯いて、なかなか顔を上げてくれない藤堂君を覗き込んだ

のが、軽率だった――


私の視界が反転し、優しく畳に押し倒された。


「藤堂君…!」

「お前がそんなんだから、こうなるんだぞ…?」

「えっと…」


彼は、大きい目をとろんとさせて、私の髪や頬を愛おしそうに撫でる。


「明日香に触りたいとか思てる輩、左之さんや新ぱっつぁんだけじゃねぇから、他の男もいつ寄ってくるか…」

「…藤堂君も、思うの…?」

「え…」

「藤堂君も私に触りたいって、思う…?」


私を撫でていた手が、ぴたりと止まる。

見詰められる表情が、あまりに男らしくて、私の動悸を速める。

そこには、いつもの彼らしいあどけなさはなく
“男の人”だった――


「…思うに、決まってんだろ…っ」

「…んっ」


いきなり重ねられた唇は、熱くて甘かった。
その口付けに酔わされた私は


「…いい、よ…」

「え…?」

「藤堂君なら、いくら触っても…嫌じゃない」

「本気で言ってんの…?」

「うん…。触って」


そう言って、彼の手を取り自身の胸に抱くと、躊躇うことをやめた手が緩やかに動かされた。

「あっ…」

私には、彼を拒む理由がなかった。

ずっと一緒にいたい、大好きな人だから――

「…んぁ…」

行為が進む程、口付けも深くなり、露わになった私の肌に、解かれた彼の長い髪がかかった。

彼の全てが好き。

私が女らしくなれたとしたら、それはきっと、藤堂君がいたから――

「ん………あっ!」

胸の頂を器用に舐められ、あまりの快感に力が抜けた体を藤堂君に抱き上げられた。

「明日香、こっち…。畳汚すと、土方さんにどやされるからな…」

「………うん」

抱えられた体は、そっと布団に寝かされた。

「…へ、すけ…」

「…明日香を愛してる…」

「…私も、平助を愛してる…」

不確かな永遠の誓いの後、平助は私の胸元に、幾つもの花弁を降らせた。

全てをさらけ出した私達は、咲き乱れる桜のように果てた――



            終
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