薄桜鬼
□部屋に連れ込む藤堂くん
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この日の夜は、屯所で酒宴が開かれた。
給与が入ったこともあったらしいが、何より土方さんがたまにはみんなで、と提案したことから始まった。
だから今部屋の熱気は、最高潮に達している。
「ほら見ろ!!この立派な腹の傷!!」
「ま〜た始まったよ!左之さんの昔話」
「よっ!左之、色男!」
いつもの3人の中で、原田さんお決まりの切腹話が始まったようだ。
一方では、沖田さんが土方さんに仕切りにお酌していた。
「それにしても、まさか土方さんから酒宴を開いて貰えるなんて、思いませんでしたよ」
「お前は俺を何だと思ってやがる」
「何って、鬼以外何があるんです?」
「総司!」
「ほらほら、折角ですからどんどん飲みましょうよ」
殆ど飲んでない沖田さんに勧められ、土方さんの顔が紅熟していくのを心配そうに見ている斎藤さん。
そんなみんなの様子を、保護者のような目で眺めている近藤さん。
私はこの光景に幸せを感じた。
ここの人間じゃない私も、一員になったんじゃないかと錯覚してしまう程。
「お〜い、明日香ちゃんも飲めよ〜」
「そうだ!飲んどかねぇと損だぞ!」
ずっと酒宴を眺めていた私に、永倉さんと原田さんはお酒を持ってきてくれたが
「わ、私まだ未成年なんで…」
「何言ってんだ?明日香も立派な女なんだ。飲めよ」
「女って…///」
「あぁ、明日香ちゃんはすげぇいい女だ!」
褒めて貰えてるということは素直に嬉しいのだが…
二人の目線が怪しい。
「体だって、屯所に来た頃より女らしくなったぜ?」
「え…」
「ごもっとも!女らしくなり過ぎて、俺は触りたくて触りたくてしょうがねぇ!!」
「えぇ!?」
何だか話の流れも怪しくなり、私は身の危険を感じ後退りしたが、二人の男の人には適わなく、壁に追い詰められてしまった。
この空気の中、そんな私達に気付いてくれる人はいない。
「あの…二人共、すごく酔ってますよね?」
「だから何だ」
「や、やめましょうよ…!」
「俺らが何しようかわかってんのか」
「……!」
いつもの二人らしくなくて、怖くて、私の視界は自然と歪んでいった。
「左之さん!新ぱっつぁん!」
瞳から零れると同時に、天の声とも言えるような声がした。
「ちょいちょい!俺が瓦行ってる間に何やってんの、おじさん達は!」
詰められていた3人の間に、藤堂君は立ち塞がった。
「何だ平助。後でのこのこ現れやがって!」
「平助は、こいつに触れねぇよ」
「はぁ!?何言ってんだよ!ここは危ねぇ、明日香行くぞ!」
酔いが回っている二人に話が通じないことがわかると、藤堂君は私の手を引いて部屋を出た。
残された二人の悔恨の声がいつまでも響いていた。