薄桜鬼

□藤堂くんと島原
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「はぁ…ここまで来りゃいいだろ」


走りっぱなしだった足を止め、狭い路地に身を隠す
酒宴を荒らしてしまったため、お座敷の主人が私たちを探しているはずだ

周りが静かになって、藤堂君はやっと抱いている私に目を向ける


「うわぁぁぁ!悪い!えっと…その…」


体を引き離し、何から話そうとあたふたする藤堂君に私は笑いかけた


「藤堂君、助けてくれてありがとう」

「へ………?」

「…嬉しかった」


私の言葉に大きな目を見開くと、彼はそのまま視線を逸らす


「あれは…明日香が他の男に触られんのが嫌で…
そもそも、お前を島原に連れて来るべきじゃなかったんだ…
嫌な思いさせて、ごめんな…」

いつもの明るい笑顔を微塵も感じさせないその表情に、私は悲しくなってしまった

藤堂君にこんな顔をさせているのは、私なのに


「藤堂君…私、藤堂君と一緒だったから島原に来たんだし、それに藤堂君が守ってくれたから、嫌なことばっかりじゃなかったんだよ?」


「明日香…」


まっすぐ目を見て伝えた
この気持ちに嘘はない

藤堂君の顔が歪んだ


「もう…耐えらんねぇ」


え?と聞き返す前に、背中に固く冷たい木の感触を感じた

私は優しく壁に押し付けられていた


「こんな綺麗な格好してる上に、そんなこと言われたら…我慢なんてできねぇよ」

「…んっ」


ゆっくり重ねられた唇は、ほんのりお酒の味がした

でも、嫌じゃなかった

寧ろ、もっと味わいたいとさえ思った


しかし、その唇はすぐに離れてしまった


「いきなり、ごめんな…。嫌だったら嫌って突き飛ばしていいんだぞ」


「嫌じゃないよ。それに…
もっと、して…」


「明日香っ…!」


再び重なった唇の間から絡められた舌
深くなる口付けにお互いが酒興した気分になる


「…んぁ…ん、ふ…」


私はその首に腕を回し、夢中で藤堂君を貪る

彼と口付けている時だけは、自分が別時代から来たことなんて忘れられた


「………あ」


静かに振袖の帯が緩められた


「藤堂、君…」

「明日香…ずっと、傍にいてくれよ」


返事の代わりに、私は目を閉じ、彼を受け入れた



その後、帰った私たちに土方さんのお説教が待っていたのは、言うまでもない



            終
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